気候変動への取り組み

基本的な考え方

持続可能な社会の実現に向けて、気候変動への対応は世界的な課題となっています。日揮グループはマテリアリティとして「環境調和型社会」を掲げ、事業活動を通じ気候変動への対応を図るとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言のシナリオ分析などを踏まえて事業戦略を検討・策定し、実行しています。

気候変動関連の情報開示

当社グループは、国際的な気候変動関連の情報開示のフレームワークについて、2021年からCDPへの回答を行っているほか(2025年度はB評価)、有価証券報告書を含め、TCFDの賛同企業としてこれに準拠した開示を行っています。
詳しくは、CDP Climate Change 2025回答[PDF:1.26MB]をご覧ください。

CDP DISCLOSURE INSIGHT ACTION
TCFD TASK FORCE ON CLIMATE-RELATED FINANCIAL DISCLOSURES

ガバナンス

当社グループの気候変動対応の責任者は代表取締役会長兼社長であり、気候関連リスクと機会の評価と管理の両方を行うことを含め、環境関連の課題を当社グループの経営戦略や経営目標に反映させる責任を負っています。2021年5月に発表した長期経営ビジョン、および中期経営計画は、リスクと機会の把握を含めた気候変動シナリオ分析の結果も踏まえて、取締役会での審議を経て策定しました。また、気候変動関連課題のモニタリングは、当社グループの気候変動対応を含めたサステナビリティに係る方針、および行動計画の策定、ならびに行動の評価・推進に係る審議を行うサステナビリティ委員会により行われます。委員会の下には「GHG算定分科会」と「CO2削減分科会」を設置し、温室効果ガスの排出状況や削減に関する対応状況を報告・審議し、リスクの低減と未然の防止を推進しています。

戦略

当社グループでは、気候変動に関するリスクおよび機会を認識し、戦略に反映しています。

気候変動に関するリスクおよび機会の認識

当社グループは国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook 2020」のデータをベースとし、STEPS(物理シナリオ)およびSDS(移行シナリオ)に準拠する複数のシナリオ等を前提に2040年をターゲットとして行った分析を通じて、以下のとおり気候変動に関するリスクおよび機会の影響を評価し、戦略に反映しています。

主なリスク

新たな規制リスク グローバルなカーボンプライシングの導入は資機材コストや燃料の高騰につながり、将来、事業コストに影響を及ぼす可能性がある。また、炭素税の導入、各国の炭素排出目標の強化などは、オイル&ガス分野におけるプラント需要の減少によって受注機会が減少するリスクになりうると認識している。
技術リスク 電気・燃料電池自動車の普及によるガソリン需要の減少や脱炭素素材の普及、また高性能蓄電池の普及によって再生可能エネルギーへのシフトが進むことは、オイル&ガス関連プラント需要の減少につながる可能性がある。
法的リスク 気候変動対策に関する情報開示等の法的義務が拡大することが想定され、報告等の義務負担が増加し、また、当該義務違反があった場合、罰則及び建設に係る許認可が失効するなどのリスクがある。
市場リスク オイル&ガス関連プラント需要の減少によって、受注機会が減少する可能性がある。
また、金融・資本市場の化石燃料関連ビジネスに対する忌避がプロジェクトの成立に影響を及ぼすリスクもある。
レピュテーションリスク 低炭素化、再生可能エネルギー、水素関連など気候変動対策に貢献する技術力を有する企業としての評価の維持・向上を怠った場合には受注機会、資金調達、人財確保などの諸側面で悪影響が生じるリスクがある。
緊急性の物理的リスク 豪雨や暴風雨、台風、洪水など、温暖化に起因するとされる極端な気象現象が増加することによって、資機材・当社グループの施設への物理的被害、従業員に対する人的な被害に加え、資機材調達の遅延も含め事業に影響を与えるリスクがある。
慢性の物理的リスク 上昇する平均気温により、温帯・熱帯地域での建設現場の労働生産性の低下による工期延長が一般化し、プロジェクトコストが嵩むため顧客の投資判断に影響する可能性がある。また、労働安全リスクの増加による対策費用および災害補償費用の増加も懸念される。加えて、沿岸地域での海面上昇が発生した場合、港湾が使えなくなることによる輸送コストの上昇リスクがある。

主な機会

製品・サービス 国内外で複数の実績を有するCCS(CO2の回収・貯留)および他社と共同で開発を進めているCCUS(CO2の回収・有効利用・貯留)の技術をオイル&ガス分野に応用することにより、同分野のプラント需要を喚起し、受注機会の増加につながることが期待できる。
太陽光発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギー発電設備について、当社グループは多数の実績を有しており、脱炭素化に向かう国際社会の流れのなかで受注機会の増加が期待できる。
脱炭素社会に向けてCO2を排出しない水素、アンモニア、SMR(小型モジュール原子炉)などの分野について、当社グループは技術開発含め、取り組みを進めてきており、今後受注機会の増加が期待できる。
当社グループが開発を進めている、廃プラスチックケミカルリサイクル、廃繊維リサイクル、持続可能な航空燃料(SAF)などの技術に関して世界的な資源循環ニーズの高まりに伴う需要の拡大が期待できる。

シナリオ分析

なお、気候移行計画の策定を念頭に、日本政府のエネルギー基本計画やNDC(国が決定する貢献)の見直しの動向も踏まえつつ、パリ協定における1.5℃目標と整合したシナリオ分析の見直しについて、検討の予定です。

環境調和型社会の実現に資するビジネス領域(2040年ビジョン)

前述のリスク・機会の認識やシナリオ分析を踏まえ、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」においては、エネルギートランジション、資源循環および高機能材のうち下記の注力分野を「環境調和型社会」の実現に資するビジネス領域と位置付けています。

グリーンボンドを活用した「環境調和型社会」の実現に資するビジネスの推進

日揮グループでは、新たなグリーンプロジェクトに充当するための資金調達手段として、2023年9月19日付で総額100億円のグリーンボンドを発行しました。本グリーンボンドの発行は、事業活動を通じた社会課題の解決によって経済価値、社会価値、環境価値の創出に貢献するという当社グループのコミットメントを、投資家の皆さまをはじめ、社会に幅広く認知していただく機会になると考えています。

リスク管理

当社グループではサステナビリティ委員会にて審議の対象とするほか、グループリスク管理委員会において、サステナビリティに関するリスクを含む当社グループのリスク全体の把握・整理、リスク管理システムの維持・構築、改善の提案・審議が行われています。

指標と目標

2050年カーボンニュートラル宣言

これまでオイル&ガス分野をメインビジネスとしていた当社グループは、Planetary healthに向けた変革を通じて持続的な企業価値向上を実現していくための決意の証として、2020年から「2050年カーボンニュートラル宣言」を公開しています。

GHG排出実績

  • 2024年度GHG排出量実績については、信頼性向上の一環として、①日揮ホールディングスおよび日揮において、測定対象排出源を追加、また②日揮グローバルおよび日揮において、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)開発のサステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」第6項(16)に定める「経営支配力アプローチ」に基づきGHG排出量の集計範囲を精査した結果、従来対象に含んでいた協力会社による排出分を今次測定より除外し、Scope3として測定する等の算定方法の見直しを実施しました。その結果、Scope1+2排出量の2024年度実績は、2023年度実績(開示値)133,695t-CO2に対し115,202t-CO2となりましたが、当年度と同一条件で比較した場合、日揮グローバルにおける大型建設プロジェクトの工事が最盛期であったことが増加の主要因となっています。なお、下表の2020年度(基準年)および2023年度実績についての当年度との同一条件による試算値は、過年度分のデータの制約から、推算を含んでいます。
    また、各排出量実績はいずれも、主要な排出主体である当社、日揮コーポレートソリューションズ、日揮グローバル、日揮、日揮触媒化成、日本ファインセラミックスおよび日本エヌ・ユー・エスにおける排出源と排出量を特定し、削減策などを検討することを目的として各社が独自に算定した排出量の合計を参考として開示するにとどまることから、引き続き、その信頼性の向上に取り組んでいきます。
年度 2020年度(基準年) 2023年度 2024年度
開示値 試算値 開示値 試算値
Scope1+2(t-CO2
 うちScope1
 うちScope2
132,546
84,325
48,221
(112,459)
(70,562)
(41,896)
133,695
83,729
49,966
(106,920)
(63,982)
(42,938)
115,202
73,443
41,759
原単位ベース排出量
(t-CO2/売上高・億円)
30.55 (25.92) 16.06 (12.84) 13.43
原単位ベース排出量の基準年比 ̶ ̶ △47% (△50%) (△48%)
Scope3(t-CO2 開示なし ̶ 1,497,309 (1,524,195) 1,569,339
  • 2024年度と同一条件による試算値および試算値をもとに原単位ベース排出量を比較した結果を、上記表の( )内に示しています。
  • Scope3は、カテゴリー11(販売した製品の使用)および関連性がないと認識したカテゴリーについては、排出量に含めていません。
  • 本排出量算定の前提や内訳などの詳細については、国際的な気候変動関連の情報開示の枠組みであるCDP2025への当社グループの回答(モジュール7:環境実績-気候変動の関連箇所)をご参照ください。

GHG排出量の管理・削減を推進

当社グループでは、グループ共通の課題としてGHG排出量の削減に取り組むため、共通指標として売上高当たりの原単位排出量(目標:2020年度比30%削減)を用いており、一定の成果を上げています。一方で、排出総量が減少していない実態を踏まえ、事業セグメントごとの特性を踏まえたうえで、各グループ会社の実態に即した形で、効果的なGHG排出量削減活動の管理・推進に取り組んでいきます。

総合エンジニアリング事業

特性

  • EPCプロジェクトの遂行状況やその件数・規模等によって、年度ごとにGHG排出量が変動し、予測も立てにくい
  • 建設地が数年ごとに変わるため、恒久対策を施しにくい

主な削減活動

  • 横浜オフィス:経済産業省GXリーグへの参画に際し、主要事業所である横浜オフィスを敷地境界とし、GHG排出量削減目標を提出。本目標の達成に向け、段階的な再エネ電力の導入や非化石証書の購入を実施
  • 海外現場:建設現場オフィスや宿舎におけるソーラーパネルの設置や、試運転に使用する仮設コンプレッサーの運用方法の最適化等を検討中
  • 国内現場:事業所における電力契約の見直し等を検討中

機能材製造事業

特性

  • 基本的には、活動量(生産量)の増加に応じてGHG排出量も増加する
  • 生産工場や事業所が固定であるため、恒久対策が立てやすい

主な削減活動

  • 生産工場における太陽光パネルの設置や高効率機器への更新
  • 事業所における照明のLED化
  • 非化石証書の購入を実施