Sustainability Initiatives
脱炭素社会の切り札
水素エネルギーは、燃料として使用する際にCO2が排出されないため、将来的な利用拡大が期待されています。一方で、経済性や安全性の観点から、輸送や貯蔵に際し効率的なエネルギーキャリア*に転換することが求められるなど、商業化に向けた課題が存在します。
- *気体のままでは貯蔵や長距離の輸送の効率が低い水素を、液体にしたり水素化合物にして効率的に貯蔵・運搬する方法
すべての水素キャリアに対応が可能
水素キャリアの実用化に向けて技術開発が進んでおり、今後普及が期待される三つの主要な水素キャリアのすべてに対応できるのが日揮グループの特長です。中でも、水素密度が最も高く、既に大規模なサプライチェーンが確立している水素キャリアとしてのアンモニア(NH3)に大きな強みを持っています。
アンモニアは、常圧下で-33℃、常温で8.5気圧といったマイルドな条件で液化する比較的取り扱いが容易な物質であり、肥料などの用途において既に世界で最も多量に使用されている化学物質の一つです。燃焼時にCO2を排出しないため、燃料としての直接利用の拡大も期待されています。燃料アンモニアの需要は、日本国内だけでも、2030年時点で約300万トン~500万トン/年*まで伸びることが予測されています。
- *出典:一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会「アンモニアロードマップ」
世界で初めてグリーンアンモニア合成と発電に成功
日揮グループは、産業技術総合研究所と共同で、太陽光発電由来の電力を用いた水電解による水素製造、低温・低圧でのアンモニア合成、アンモニアガスタービンによる発電(47kW)という、グリーンアンモニア*のバリューチェーンの実証に世界で初めて成功しました。
- *再生可能エネルギーからの水の電力分解などにより製造した水素と空気中から分離した窒素を原料に製造されたアンモニア
グリーンアンモニア製造に関する技術開発事例
グリーンアンモニアの原料となる再生可能エネルギーは常に変動することから、プラントの構成要素(再生可能エネルギー・水電解装置・水素タンク・アンモニアプラントetc.)は変動吸収能が求められ、適切な容量設計が必要になります。
日揮グループでは、グリーンアンモニアプラントの設備構成を最適化するソフトウェアGAPAOTM(Green Ammonia Plant Automated Optimizer)を開発しました。場所・季節・種類によって様々な発電プロファイルを示す再生可能エネルギーに対して、設備・建設コスト等を考慮したうえで、適切な容量設計を実施し、製造コスト低減に貢献します。
大規模水素製造システムを活用した
グリーンケミカルプラント実証プロジェクトを開始
日揮グループは旭化成株式会社と共同で、これまで培ってきた水素関連技術の社会実装をより早く、確実なものとするため、NEDO* が実施する「グリーンイノベーション基金事業」にて、大規模水素製造システムを活用したグリーンケミカルプラント実証に挑戦いたします。
本事業を通じて、変動する再生可能エネルギー由来の水素を原料としたプロセスにおいて、水素供給量を制御し、ケミカルプラントの運転最適化を実現するシステムを開発・実証します。
- *NEDO:新エネルギー・産業技術総合開発機構
世界初のブルーアンモニア輸送に向けた実証試験に参画
再生可能エネルギー由来の電力で製造するグリーンアンモニアだけでなく、化石燃料からアンモニアを製造し、副生するCO2の排出をCCSなどで抑制するブルーアンモニア*も、将来的な利用拡大が見込まれています。日揮グループは、一般財団法人日本エネルギー経済研究所とサウジアラビアン・オイル・カンパニーが推進する、サウジアラビアにおけるブルーアンモニアの日本に向けた供給ネットワークの実証試験へ参画し、普及に向けて貢献しています。
- *化石燃料を原料にアンモニアを製造する方法。副生するCO2を回収し、地中に貯留するCCSや、石油増進回収に活用するEORなどの技術を活用し、CO2フリーで製造することが可能。
AMUSE ®
日揮グループは、積極的な技術開発を通じて、水素キャリアおよび燃料としてのアンモニアの普及を推進しています。これらの取り組みの総称としてAMUSE®(AMmonia Use as a Sustainable Energyが由来)と名付け、他企業や研究機関と連携し、国内外のアンモニア製造案件の開拓を行っています。