プロジェクトストーリー
大海原を切り開く、果てしない挑戦
マレーシア PFLNG2プロジェクト

日本企業初、洋上LNGプラント受注
世界各地に分布するガス田のうち、多くは埋蔵量が中小規模のガス田であり、そのほとんどが海洋に存在する。新興国を中心とするエネルギー需要の増加を背景に、現在、国営石油会社やメジャーオイルによって、これまで経済性の観点から開発、事業化が進んでこなかった海洋の中小規模ガス田の開発計画が進んでいる。
マレーシア国営石油会社(通称:ペトロナス社)も、同国サバ州の沖合ガス田の開発を目的に世界で3番目となる洋上液化天然ガス(LNG)プラントを建設するプロジェクトを計画していた。洋上LNGプラントは、海底から引き上げた天然ガスを船上で冷却し液化するため、その場で生産と出荷を行えるのが特徴だ。ガス田の枯渇とともに役目を終える陸上LNGプラントに比べ、ひとつのガス田での採掘が終わると次の鉱区に移動できる利点もある。
当社グループは、陸上、洋上問わずLNGプラントのトップコントラクターとしての地位を確立するべく、韓国を代表する総合重工業企業であるサムスン重工とコンソーシアムを結成し、積極的な営業活動を展開。当社グループの陸上LNGプラント建設に関わる豊富な実績と、サムスン重工業が持つ高い造船技術などがペトロナス社から総合的に評価され、2014年2月、当社グループは日本企業で初めてとなる洋上LNGプラント建設プロジェクトの受注に成功した。


大海原を切り開く
本プロジェクトは、水深1,000メートルを超える深海ガス田向けとしては世界初となる洋上LNGプラントを建設する、海洋油ガス業界において先駆的なプロジェクトであり、技術的な難易度も非常に高いものであった。
洋上LNGプラントの建設において、当社はほぼ全ての設備を陸上でブロック状に先組みする「モジュール工法」を採用。船上でこれらのモジュールを搭載することにより、大規模かつ複雑な設備の統合・完成を可能とした。洋上プラント特有の波や潮流による揺れの影響や、爆発・火災防止への対応を考慮し、大海原での操業に耐えうる繊細な設計が求められた。さらに、スケジュール通りにモジュール製作を進めていくためには、製作を担当するサムスン重工業に速やかに正確な図面などの設計情報を渡す必要があり、まさに質とスピードの両立が求められた。
プロジェクトを開始する際、当社グループはモジュール工法のスケジュールを守るため、一から設計フローを見直し、すべての部門が一括で設計を行い、上流・下流に関わらず、部門の壁を超えて情報を共有する「空間設計」という手法を初めて導入した。各部門が設計の状況や変更をオンタイムで取得することで、効率的な設計が可能となり、結果として通常の陸上プラントに比べて約半年早い図面の作成・発行を実現した。


洋上LNGプラント分野での挑戦は続く
2020年2月、幾多の困難を乗り越え、サムスン重工業の韓国造船所にて洋上LNGプラントが完工した。時のマレーシア大統領を迎えた進水式も盛大に執り行われ、ついにマレーシアへ向けて出航した。韓国からマレーシアへ回航される間にコロナの影響が世界的に拡大し、人や物の国際的な移動が大幅に制限されるなか、マレーシア沖でのスタートアップは困難を極めた。しかし限られた乗員が一丸となって取り組むことで、2021年にはついにLNGの生産と出荷にまでこぎつけることができた。
この実績が高く評価され、当社グループは再びペトロナスから新たなる洋上LNG プラントを受注し、現在進行中である(2024年8月現在)。また当社グループは、アフリカ地域初となるモザンビークの洋上LNGプラントも受注し、2023年に完工を迎えるなど、洋上LNG分野におけるトップコントラクターとしての地位を確固たるものにしている。
当社グループの大海原での挑戦は、いまも続いている。

関連する事業