Project Story Project Story

プロジェクトストーリー

エネルギー供給と環境保全の両立を目指して

広島県 大崎クールジェンプロジェクト

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環境と調和する石炭火力発電所

石油や天然ガスと比べて埋蔵量が豊富にあり、低価格、かつ政情の安定した国々を中心に広く分布している石炭。これを燃料とする石炭火力発電所は、日本のみならず、アジア諸国を中心に今後もベースロード電源として需要拡大が見込まれている。しかし、石炭は他の化石燃料と比較して燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量が多く、石炭火力の発電効率を高め、CO2の排出を大幅に削減するクリーンコールテクノロジーの開発が急務となっている。

大崎クールジェンプロジェクトは、石炭火力発電を取り巻く環境を踏まえ、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業として、国のクリーンコール政策に則り、究極の高効率発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)とCO2分離回収技術を組み合わせた「革新的低炭素石炭火力発電」の実現を目指して計画されたプロジェクトである。

IGCC分野では、日本で残渣油を燃料としたIGCC設備の設計、建設実績を有し、さらにCCS分野では日本のみならず、アルジェリア、オーストラリアで設備を設計、建設した実績を有している当社グループにとって、この大崎クールジェンプロジェクトはそれらを通じて蓄積した技術力、知見を発揮できるまたとない機会であった。

当社グループは、2012年に大崎クールジェン株式会社(中国電力株式会社、電源開発株式会社の共同出資会社)によるこのプロジェクトの第一段階である酸素吹IGCC設備に参画したのに引き続き、第二段階となるCO2分離回収設備の設計、建設工事を受注し、2017年5月からプロジェクトを開始した。

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瀬戸内海に浮かぶ孤島でのプロジェクト

広島県竹原市からフェリーで30分。大崎クールジェンプロジェクトの建設現場は、瀬戸内海に浮かぶ、レモンやみかん、ブルーベリーなどの栽培が盛んで風光明媚な大崎上島にあった。

内陸から離れた孤島での建設工事であったことから、当社グループの駐在員を含め、最盛期400名のすべての現場作業員が寝食を共にする環境を整え、全員分の食料や日用品の確保、さらには作業員のメンタルケアを含めて、通常の国内の建設工事とは異なる取り組みを実施する必要があった。さらに、設備に必要とされる機器や材料はすべて海上輸送となり、決められた船のスケジュールにあわせた分単位での緻密な調整も求められた。

2018年10月9日午前8時、澄み渡るような快晴のなか、大崎上島の建設現場では数十名の関係者が一様に緊張した面持ちで一点を見つめていた。CO2分離回収設備の中核機器である長さ約40mのCO2吸収塔の陸揚げだった。陸揚げしたのち、現場に輸送し、据え付けまでの一連の工程を当日中に終えなければならない。正にプロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではなかった。

「構想段階から数年をかけて多くの関係者と検討してきた機器の実物を目の当たりにし、自分が負っている責任の重大さに身震いした。」陸揚げされる巨大なCO2吸収塔を眺めた時のことを、プロジェクトマネージャーの宮本はこう振り返る。

午前9時半。無事に陸揚げを完了して一息ついたのもつかの間、建設工事中の設備の中を縫うような輸送が始まった。輸送するCO2吸収塔よりも数十センチ高いだけの鉄骨の下をくぐりぬけ、輸送車がぎりぎり通る狭い空間を通過させるなど、ミリ単位の繊細な調整が必要とされる場面もあった。午後5時、巨大なCO2吸収塔は国内における通常の建設工事では見ることのない500トンのキャパシティを持つ大型クレーンで吊り上げられ、予定通り据え付けを完了した。張り詰めた緊張感から解放された関係者の顔に安堵の表情が浮かんだ。

遡ること3か月前の2018年7月には、大崎クールジェンプロジェクトは中国地方を含む広い範囲を襲った西日本豪雨に見舞われた。機材の製作を発注していた取引先の工場の操業が停止するなどしたが、現場工事スキームの見直しや、別の地域からの作業員の手配などをはじめとした手段を的確に講じたことで、その影響を最小限に留めた。

度重なる困難に直面しながらも、プロジェクトの遂行を最前線で支えているのは、建設現場で陣頭指揮を執っているコンストラクションマネージャーの高橋である。20代~30代の若手社員が現場駐在者の半数以上を占める環境の中で、彼らにチャンスを与え、責任は自分が取るという姿勢を貫いたことで、若手社員の間に主体的に行動していこうとする意識が定着していった。

こうした地道な努力と顧客からの協力が相まって、世代や会社の違いを越えて関係者が一つのチームとして纏まったことは、大崎クールジェンプロジェクトの大きな推進力になっていることは間違いない。現在、2019年中の完工に向けてプロジェクトは最終局面を迎え※1、関係者は気を緩めることなく建設工事に取り組む毎日が続いている。

  1. ※12019年10月時点

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環境調和型社会の実現

大崎クールジェンプロジェクトを推進しているもう一つのものは、このプロジェクトを実現していくことで環境問題の解決に貢献したいという当社グループの強い思いである。

当社グループは、LNG(液化天然ガス)など環境負荷の小さいエネルギーを生産するプラントや太陽光発電所といった再生可能エネルギーを利用した発電プラントの建設をはじめ、幅広い分野で環境問題の解決に取り組んでいる。とりわけ、CO2の排出削減というテーマでは、天然ガスに含まれるCO2を吸収分離、高圧で回収し、低コストで地中に貯留することができる新技術HiPACTの開発や、優れたCO2分離性能を持ち、高圧環境化でも使用できるDDRゼオライト膜※2を用いて、CO2を油層に注入し、残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するCCUS(Carbon Dioxide Capture, Utilization and Storage)を推進するなど、多彩な取り組みを行っている。

プロジェクトに参画している当社グループのすべての関係者に共通しているのは、大崎クールジェンプロジェクトを成功裡に完工することができれば、環境問題の解決に貢献したいという強い思いをまた一つ形にすることができるという願いである。

  1. ※2ゼオライトとはミクロ多孔性の結晶性アルミノケイ酸塩であり、現在、多くの種類のゼオライトが人工的に合成され、触媒や吸着剤等として工業的に活用されています。DDRとは、ゼオライトの骨格構造の一つです。DDRゼオライト膜は、日本ガイシ株式会社と共同で開発しました。