コーポレート・ガバナンス
基本的な考え方
日揮グループは、当社グループのパーパス(存在意義)「Enhancing planetary health」のもと、中長期的に企業価値向上を図るとともに、持続的な成長を実現するうえでコーポレート・ガバナンスが企業経営の基盤であるとの認識に立ち、当社グループとして優先的に取り組むべきテーマであるマテリアリティの一つとしてコーポレート・ガバナンスを位置付け、その強化に取り組んでいます。
コーポレート・ガバナンスの中心的な機関である取締役会においては、その構成・機能・役割について継続的に見直しを図るとともに、取締役会の実効性に関しては、分析および評価を毎年実施し、着実な改善を通じてさらなる向上を図っています。
また、ステークホルダーとの対話(エンゲージメント)においては、透明性の高い情報開示に積極的に取り組み、対話から得られた意見をコーポレート・ガバナンスの強化を含め、企業経営に活かしています。
更に、コーポレート・ガバナンスが適切に機能するうえで必要不可欠なコンプライアンスの遵守などについても、当社グループのパーパス(存在意義)およびバリューズ(価値観)において、役員、従業員一人ひとりが高い倫理観を持ち、誠実に行動することを価値観として共有することにより、当社グループ全体で中長期的に企業価値の向上を図り、持続的な成長を実現していくための努力を重ねています。
コーポレート・ガバナンス体制の概要
当社は取締役会設置会社、監査役(監査役会)設置会社であり、当社グループは、当社を持株会社とし、傘下に各中核事業を推進する事業会社を配置する持株会社体制を採用しています。
「経営」と「執行」の分離により当社と各事業会社の役割責任を明確化し、当社は、持株会社として当社グループの中長期的な視点に基づく経営方針の策定、および事業会社統括管理の機能を担い、各事業会社は、当社グループの経営方針・経営戦略に基づき、それぞれのマーケットの特性に柔軟かつ迅速に対応し、各事業の拡大および成長を担います。これにより、当社グループの企業価値の最大化および当社グループ全体の最適な経営資源配分を実現するとともに、企業運営の透明性の向上および当社グループ全体のガバナンスの強化を推進しています。そのために、当社は、グループとして重要な事項を審議する会議体を設置するとともに、執行役員制度を導入し、経営の意思決定および業務執行の効率化を図っています。コーポレート・ガバナンス体制の主な整備状況は以下のとおりです。
会議体名称 | 設置目的 | 開催頻度 | 構成員 | 機関の長 |
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取締役会 |
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原則毎月1回 | 取締役8名(うち社外取締役4名) 監査役5名(うち社外監査役3名) (議論の充実を図るため、事業会社の役員、特定分野を担当する執行役員または担当部門などの関係者も必要に応じて出席) |
代表取締役会長 佐藤 雅之 |
監査役会 |
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原則毎月1回 | 監査役5名(うち社外監査役3名) | 常勤監査役 伊勢谷 泰正 |
指名委員会および報酬委員会 |
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毎年1回開催(必要に応じて都度開催) | 代表取締役会長 佐藤 雅之 代表取締役社長 石塚 忠 4名の社外取締役※(遠藤 茂、松島 正之、植田 和男および八尾 紀子)
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指名委員会: 社外取締役 遠藤 茂 報酬委員会: 社外取締役 松島 正之 |
グループ経営会議 |
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原則毎月1回 | 代表取締役会長 佐藤 雅之 代表取締役社長 石塚 忠 監査役(輪番) (当社グループ各社の役員のなかから議長が指名する者など) |
代表取締役会長 佐藤 雅之 |
グループ投融資委員会 |
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原則毎月1回 | 常任委員:当社および当社グループの取締役、 執行役員および監査役7名 非常任委員:当社の執行役員2名が議題に応じて都度出席 |
代表取締役会長 佐藤 雅之 |
サステナビリティ委員会 |
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原則毎年1回 | 代表取締役会長 佐藤 雅之 当社グループ各社の社長および委員長が提案し、被指名者の所属会社社長の了承を得た者 |
代表取締役会長 佐藤 雅之 |
会計監査人 |
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コーポレート・ガバナンス体制

内部統制システムの整備の状況
当社は、取締役会において内部統制システムに関する基本方針を決議し、適宜改定を重ねています。
【整備の状況】
- 1.監査部を設置して当社および当社グループの内部統制システムの有効性の検証・評価・改善および必要に応じた個別監査
- 2.職務権限規程を設けて各役職の職務と権限を規定し、会社経営および業務執行における責任体制を明確化
- 3.グループとしての業務の効率化および適正化を図るために、グループ会社管理規程を制定し運用
コーポレートガバナンス・コードへの対応について
2015年6月の東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」制定以降、当社にとって相応しいコーポレート・ガバナンスについて継続して検討を重ね、より一層コーポレート・ガバナンスを深化させるための各種取組みを着実に進めております。2021年6月11日付け改訂後のコーポレートガバナンス・コードに基づくコーポレート・ガバナンス報告書は、こちらをご参照ください。
【内容】
- 1.CGコードに定められているすべての原則の実施
- 2.東京証券取引所が開示を求めている14の基本原則、原則、補充原則のすべてについて開示
取締役会について
取締役会の機能
当社の取締役会は、当社グループの中長期的な戦略・課題に関する意思決定およびグループ各社の業務執行に対する監督の機能を担っており、この機能を効果的かつ効率的に発揮することができる取締役会の構成としています。
取締役会の構成および多様性に関する基本方針について
当社グループの中長期的な戦略・課題に関する議論をより一層充実させ、グループ各社の業務執行に対する監督機能の強化を図る観点から、以下の構成としています。
- 1.広くビジネスマーケットについて熟知した取締役ならびに当社グループの主要な事業である総合エンジニアリング事業に関する高度な知識および知見を有する取締役が中心
- 2.外部の視点を経営に取り入れるため、取締役会における客観的な助言および独立した立場からの監督機能の発揮を期待し、独立した社外取締役を選任
また、多様な視点を持つことが重要であると考えており、経歴および専門分野などを考慮するとともに、国籍や人種、性別にかかわらず有能な人材がいれば登用する方針としています。
なお、当社は、2021年6月に八尾紀子氏を社外取締役として選任しており、引き続き、当社取締役会における多様性の確保に努めています。
取締役・監査役のスキル・マトリックス
分野 | |||||||
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企業経営 | 技術・プロジェクト管理・IT | グローバル ビジネス |
HR・人財開発・労務 | 財務・ ファイナンス |
法務・リスクマネジメント | ||
取締役 | 佐藤 雅之 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
石塚 忠 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
寺嶋 清隆 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
山﨑 裕 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
山田 昇司 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
遠藤 茂 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
松島 正之 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
植田 和男 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
八尾 紀子 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
監査役 | 伊勢谷 泰正 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
武藤 一義 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
森 雅夫 | 〇 | ||||||
大野 功一 | 〇 | 〇 | |||||
高松 則雄 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
- ※上記一覧表は、各氏の経験等を踏まえて、より専門性が発揮できる領域を記載しており、各取締役・監査役の有する全ての知見・経験を表すものではありません。
取締役会の実効性評価について
当社は、毎年取締役会の実効性について分析・評価を実施し、改善状況を確認するとともに、更なる実効性向上のための課題について取締役会で議論し、改善を図ることにより、取締役会の実効性の向上を図っています。2021年度の取締役会実効性評価のプロセス、アンケート概要、評価結果および今後の取り組み課題の詳細、および取締役会の実効性向上に向けたこれまでの主な取り組みは、以下のとおりです。
プロセス
- 取締役・監査役を対象とし、取締役会事務局によるアンケートを実施
- 前回の実効性評価の課題の改善状況などを確認
- 現在の取締役会の実効性に関する評価および更なる実効性向上のための意見を収集
- 結果に基づき、主に今後の課題について取締役会において確認
アンケート内容
- コーポレートガバナンス・コード「第4章 取締役会等の責務」の各原則に対する対応状況(前回からの改善状況を含む)を確認
- 主な評価項目:取締役会の構成、運営、議論、監督機能、株主との対話、自身の取り組み、指名委員会・報酬委員会の運営など
- 取締役会に関する評価、改善点などの自由意見をアンケートで回答
評価結果および今後の取り組み
評価結果
アンケートの分析・評価の結果、当社の取締役会は、全体として十分に実効的に機能していると評価される。2021年度は、中期経営計画のモニタリング・ローリングの体制整備、DXやSDGsへの取り組み、自由な意見交換の機会の創出、指名委員会・報酬委員会における議論等の取締役会への報告を2020年度の取締役会実効性評価に基づく重要な課題と位置付け、各種対応を行った。その結果、全ての課題につき、十分またはおおむね適切との評価が多数となったことを確認した。
課題
更なる実効性向上のための課題およびその対応方針
- 中期経営計画のモニタリング・ローリングを実効的に行うこと
- 持続的な収益性確保や資本コストの観点からグループ全体の事業ポートフォリオを議論することデジタルトランスフォーメーション(DX)およびSDGsへの取り組み
- 取締役会における審議の更なる活性化付議議案に限定されない自由な議論・意見交換の機会の創出
対応方針
- 上記の課題に向けた取締役会の議論および監督の充実
当社の取締役会の実効性向上のためのこれまでの主な取り組み

役員報酬について
役員の報酬などの額またはその算定方法の決定に関する方針
基本方針および株主総会決議について
- グローバルな競争力を高め、中長期的な企業価値の向上のために必要な経営人材を確保することを基本方針として、 2009年6月26日開催の第113回定時株主総会の決議により、報酬限度額は取締役年額6億9,000万円以内、監査役年額8,800万円以内と決定
- 取締役の個人別の報酬などの額、またはその算定方法および報酬などの構成割合の決定に関する方針については、上記株主総会の決議の範囲内に限定し、事前に社外取締役が過半数を占めかつ社外取締役が委員長を務める報酬委員会において審議され、その答申を踏まえて取締役会で決議
報酬額決定プロセスについて
- 取締役の個人別の報酬などの額および報酬などの構成割合は、公正性および透明性ならびに本決定方針との整合性を十分に確保するため、報酬委員会において、各取締役の評価および報酬金額について本決定方針との整合性を含めて総合的に審議のうえ、その審議結果に基づき代表取締役会長が決定
- 代表取締役会長は、当社の最高経営責任者として、各取締役の職務・職責、職務の成果および当該成果の企業価値向上に対する貢献度合いを最も熟知しているものとして取締役会より委任を受けており、その権限は、上記株主総会の決議により定めた報酬限度額の範囲内に限定される
- 取締役会は、最終決定の内容が本決定方針に沿うものであると判断しており、判断を行うに際し、報酬委員会における審議の概要および結果、ならびに代表取締役会長による最終決定内容について報告を受けている
固定報酬、業績連動報酬および譲渡制限付株式報酬について
- 社外取締役を除く取締役の報酬は、固定報酬、短期インセンティブとしての業績連動報酬および中長期インセンティブとしての譲渡制限付株式報酬の3種類で構成
- 報酬構成割合は、業績達成度および役位が上がるにつれて、業績連動報酬と譲渡制限付株式報酬を合わせた変動報酬の割合が高くなる設計
固定報酬
- 各取締役の役職、および担当職務に遂行上必要とされる能力や職責の重さ・影響度を考慮した職務価値に応じて決定
- 基本報酬および代表取締役手当または取締役手当で構成され、いずれも毎月支払い
- 社外取締役の報酬は、業務執行から独立した立場から適切に経営を監督することができるよう、固定報酬のみ
業績連動報酬
- 各年度の業績数値の達成を強く促し、中長期的な企業価値向上を確実に推進していくことを狙って設計
- 具体的には、中期経営計画に掲げる数値目標である「営業利益」および「親会社株主に帰属する当期純利益」を指標として役位別に算出される基礎額に対し、長期経営ビジョンおよび中期経営計画実現のために果たすべき職責をふまえて個人評価を行い、これを反映して個人別の業績連動報酬額を決定し、毎年7月に支払い
- 業績指標の評価ウェイトは、株主に対する結果責任を全うするという観点から親会社株主に帰属する当期純利益に比重を置き、上位役位ほどその傾向が強まるように設定
- 親会社株主に帰属する当期純利益が損失となる場合は、業績連動報酬は不支給となる
- 個人評価は、報酬委員会において審議することで透明性および公正性を確保
- 2021年度において、優秀な経営人材の確保を目的として、外部専門機関による報酬市場調査データ等を参考に報酬水準を見直し、更に、各取締役の業績数値達成を確実にするために業績と報酬との連動性をより一層強めた
譲渡制限付株式報酬
- 経営陣が株価変動によるメリットとリスクを株主の皆さまと共有し経営を行い、株価上昇および中長期的な企業価値向上へのインセンティブを従来以上に高めることを目的に導入
- 毎年8月に譲渡制限付株式を割当てることとしており、2021年度は、2021年8月6日付で、取締役3名に対して、基本報酬の約10%に相当する譲渡制限付株式13,713株(13百万円相当)の割り当てを実施
- 譲渡制限付株式報酬制度の概要は以下のとおり
- 【対象者】 当社取締役および執行役員ならびにグループ会社の役員
- 【支給する金銭報酬債権額(上限)】 年額1億9,000万円
- 【譲渡制限付株式の総数(上限)】 年149,300株以内(発行済株式総数の約0.06%)
- 【譲渡制限期間】 3年間から最長30年間の譲渡制限期間を設定
役員区分ごとの報酬額の総額、報酬などの種類別の総額および対象となる役員の員数

経営陣幹部の選解任に関する方針と手続きについて
選任プロセス
経営陣幹部の選任および取締役候補者の指名
- 1.社外取締役が過半数を占めかつ社外取締役が委員長を務める指名委員会において、以下の項目を中心に審議
- (1)人格・見識などの共通項目
- (2)経営陣幹部および社内取締役については、サクセッションプランで定める経験・実績およびマネジメント能力など
- (3)社外取締役については、独立性および専門性など
- 2.指名委員会において総合的に審議を行った後、取締役会で決定
なお、経営陣幹部の選任、および取締役候補者の指名については、当社CEOの後継者候補となることを認識し、上記のプロセスを経て十分な議論を行い、選任・指名
解任プロセス
経営陣幹部の解任
以下の項目に該当があった場合、指名委員会において審議のうえ、取締役会にて解任を決定
- (1)不正・不当・背信行為があった場合
- (2)法令・定款違反があった場合
- (3)選任時に求められる資質・能力が認められなくなった場合
後継者計画について
後継者計画は持続的な企業価値向上のための重要事項と認識し、指名委員会および取締役会における議論を踏まえ、以下のとおり後継者計画の運用を開始しております。
後継者計画の目的
- BSP2025、2040年ビジョンを実現し、さらにその先に亘って永続的に企業価値を向上させていくためには、その時々の事業環境および経営戦略に最も適合したトップマネジメントを登用することが必要不可欠であると認識している。
- 後継者計画は、そのようなトップマネジメントを継続的に登用することが可能となるよう、事業環境および経営戦略に基づき、トップマネジメントに求められる知識・経験、能力、資質等の人財要件を明らかにし、次期トップマネジメントの育成・人選に役立てることを目的としている。
人財要件の考え方
- 人財要件の設定にあたっては、第三者機関を通じて現行トップマネジメントにヒアリングを行い、中長期的な経営ビジョンを起点とし、将来必要な経営人財像を定義している。
- 抽出された人財要件ごとに、「各候補者群に選抜される段階で最低限身に着けているべきMust要件」および「各候補者群に選抜される段階で身に着けていることが望ましいWant要件(3段階)」に分類し、各候補者群において求められる程度を設定している。
後継者計画の考え方
- トップマネジメントに必要な人財要件を定めて次期および将来候補者群を複数名選抜し、不足している人財要件を満たす機会を与え、経験を積ませ、毎年のモニタリングで育成状況を確認しながら中長期的にトップマネジメント候補を育成していくことを当社の後継者計画の基本的な考え方とし、運用を開始している。
政策保有株式
1. 保有の目的
2018年6月に改訂されたCGコードにおいて「縮減」、「資本コスト」などについて新たに言及されました。当社は、取引先や業務提携先との関係を維持・強化することで、当社グループの中長期的な企業価値の向上に資すると考えられる場合を除き、当該企業の株式を保有しておりません。また、当社では毎年取締役会において個別の政策保有株式の保有意義の検証を行っています。具体的には、各銘柄のTSR(株主総利回り)のチェックならびに当該銘柄のROE(株主資本利益率)および数値化困難な事業上の便益等が当社の株主資本コストに見合っているかという観点も含め、定性・定量両面から検証し、保有意義の薄れた株式については、市場環境・株価動向などを勘案のうえ、売却について検討を行うこととしています。なお、検証のプロセスおよび売却・縮減実績は以下のとおりです。
2. 保有株式の議決権行使基準
政策保有株式の議決権行使にあたっては、保有先企業の持続的な成長につながり、その結果として当社グループの中長期的な企業価値の向上につながるかを勘案のうえ、賛否を判断しています。
保有意義および売却銘柄の検証プロセス

CGコード導入以降の当社政策保有株式の売却・縮減実績
