コーポレート・ガバナンス

基本的な考え方

日揮グループは、持続的な成長を実現するうえでコーポレート・ガバナンスが企業経営の基盤であるとの認識に立ち、当社グループとして優先的に取り組むべきテーマであるマテリアリティの一つとしてコーポレート・ガバナンスを位置付け、その強化に取り組んでいます。
コーポレート・ガバナンスの中心的な機関である取締役会においては、その構成・機能・役割について継続的に見直しを図るとともに、取締役会の実効性に関しては、分析および評価を毎年実施し、着実な改善を通じてさらなる向上を図っています。
また、ステークホルダーとの対話(エンゲージメント)においては、透明性の高い情報開示に積極的に取り組み、対話から得られた意見をコーポレート・ガバナンスの強化を含め、企業経営に活かしています。
更に、コーポレート・ガバナンスが適切に機能するうえで必要不可欠なコンプライアンスの遵守などについても、当社グループのパーパス(存在意義)およびバリューズ(価値観)において、役員、社員一人ひとりが高い倫理観を持ち、誠実に行動することを価値観として共有することにより、当社グループ全体で中長期的に企業価値の向上を図り、持続的な成長を実現していくための努力を重ねています。

コーポレート・ガバナンス体制の概要

当社は取締役会設置会社、監査役(監査役会)設置会社であり、当社グループは、当社を持株会社とし、傘下に各中核事業を推進する事業会社を配置する持株会社体制を採用しています。

会議体名称 設置目的 開催頻度 構成員 機関の長
取締役会
  • 業務遂行に関する重要事項の決議
  • 取締役の職務執行の監督
  • 中長期的な戦略・課題に関する議論
原則毎月1回 取締役7名(うち社外取締役3名)
監査役5名(うち社外監査役3名)
(議論の充実を図るため、事業会社の役員、特定分野を担当する執行役員または担当部門などの関係者も必要に応じて出席)
代表取締役会長CEO
佐藤 雅之
指名委員会および報酬委員会
  • 役員の選解任、報酬などに関する審議
毎年1回開催(必要に応じて都度開催) 代表取締役会長 佐藤 雅之
代表取締役社長 石塚 忠
社外取締役3名
(公正性、透明性を高めるため、社外取締役が過半数を占める構成としている)
指名委員会:
社外取締役
遠藤 茂
報酬委員会:
社外取締役
松島 正之
監査役会
  • 監査に関する重要な事項の報告に基づく協議または決議
  • その結果に基づき必要に応じて取締役または取締役会に対して意見を表明
原則毎月1回 監査役5名(うち社外監査役3名) 常勤監査役
伊勢谷 泰正
グループ経営会議
  • 当社グループの方向性や、グループ全体および事業会社における経営戦略・事業戦略などの経営に係る事項の協議
原則毎月1回 代表取締役会長CEO 佐藤 雅之
代表取締役社長COO 石塚 忠
監査役(輪番)
(当社グループ各社の役員のなかから議長が指名する者など)
代表取締役会長CEO
佐藤 雅之
サステナビリティ委員会
  • 当社グループのサステナビリティに係る方針および行動計画の策定、ならびに行動の評価・推進に係る審議
原則毎年1回 代表取締役会長CEO 佐藤 雅之
当社グループ各社の社長および委員長が提案し、被指名者の所属会社社長の了承を得た者
代表取締役会長CEO
佐藤 雅之
グループ投融資委員会
  • 当社および当社グループの投融資案件に関する審議
原則毎月1回 常任委員:当社および当社グループの取締役、
執行役員および監査役7名
非常任委員:当社の執行役員3名が議題に応じて都度出席
代表取締役会長CEO
佐藤 雅之
グループリスク管理委員会
  • 当社グループのリスク全体を把握・整理し、グループ全体のリスク管理システムの構築・維持、改善に係る立案と審議
代表取締役社長COO 石塚 忠
委員長が任命する者および各事業会社の社長の推薦により委員長が任命する者
代表取締役社長COO 石塚 忠
グループ情報セキュリティ委員会
  • 当社グループ全体での情報セキュリティ対応状況の把握、グループ各社の組織横断的な調整と対応強化の立案、審議
原則毎年2回 代表取締役社長COO 石塚 忠
委員長および副委員長が指名する当社グループ会社の社長など
代表取締役社長COO 石塚 忠
会計監査人
  • 会計監査業務を執行した公認会計士は、根本剛光氏、永田篤氏および井上喬氏であり、有限責任あずさ監査法人に所属
  • 会計監査業務に係る補助者は、公認会計士9名およびその他16名で構成

コーポレート・ガバナンス体制

コーポレート・ガバナンス体制図

「経営」と「執行」の分離により当社と各事業会社の役割責任を明確化し、当社は持株会社として当社グループの中長期的な視点に基づく経営方針の策定、および事業会社統括管理の機能を担い、各事業会社は、当社グループの経営方針・経営戦略に基づき、それぞれのマーケットの特性に柔軟、かつ迅速に対応し、各事業の拡大、および成長を担います。これにより、当社グループの企業価値の最大化、およびグループ全体の最適な経営資源配分を実現するとともに、企業運営の透明性の向上および、当社グループ全体のガバナンスの強化を推進しています。そのために、当社は、グループとして重要な事項を審議する会議体を設置するとともに、執行役員制度を導入し、経営の意思決定および業務執行の効率化を図っています。

内部統制システムの整備の状況

当社は、取締役会において内部統制システムに関する基本方針を決議し、適宜改定を重ねています。

【整備の状況】

  1. 1.監査部を設置して当社および当社グループの内部統制システムの有効性の検証・評価・改善および必要に応じた個別監査
  2. 2.職務権限規程を設けて各役職の職務と権限を規定し、会社経営および業務執行における責任体制を明確化
  3. 3.グループとしての業務の効率化および適正化を図るために、グループ会社管理規程を制定し運用

コーポレートガバナンス・コードへの対応

当社では、2021年6月11日付け改訂のコーポレートガバナンス・コードに定められているすべての原則を実施、東京証券取引所が開示を求めている14の基本原則、原則、補充原則のすべてについて開示しており、コーポレート・ガバナンスをより一層深化させるための各種取り組みを着実に進めています。
コーポレート・ガバナンス報告書はこちらをご参照ください。

  • 会計監査業務を執行した公認会計士は根本剛光氏、永田篤氏、および井上喬氏であり、有限責任あずさ監査法人に所属
    会計監査業務に係る補助者は、公認会計士9名およびその他16名で構成

取締役会について

取締役会の機能

当社の取締役会は、当社グループの中長期的な戦略・課題に関する意思決定、およびグループ各社の業務執行に対する監督の機能を担っており、この機能を効果的、かつ効率的に発揮することができる取締役会の構成としています。

取締役会の構成、および多様性に関する基本方針について

当社グループの中長期的な戦略・課題に関する議論をより一層充実させ、グループ各社の業務執行に対する監督機能の強化を図る観点から、以下の構成としています。

  1. 1.広くビジネスマーケットについて熟知した取締役、ならびに当社グループの主要な事業であるEPC事業に関する高度な知識、および知見を有する取締役が中心
  2. 2.外部の視点を経営に取り入れるため、取締役会における客観的な助言、および独立した立場からの監督機能の発揮を期待し、独立社外取締役を選任

また、多様な視点を持つことが重要であると考えており、経歴、および専門分野などを考慮するとともに、国籍や人種、性別にかかわらず有能な人財を登用する方針としています。

取締役・監査役のスキル・マトリックス

取締役(社内5名、社外5名)のスキル・マトリックス

  1. ※12024年6月開催の定時株主総会にて就任

監査役(社内2名、社外3名)のスキル・マトリックス

  • (注) スキルマトリックス各項目の選定理由についてはP.78に記載。上記一覧表は、各氏の経験等を踏まえて、より専門性が発揮できる領域を記載しており、各取締役・監査役の有するすべての知見・経験を表すものではありません。また、ESG関連分野については、取締役および監査役全員に求められる期待役割と位置付けており、上記一覧表の項目として記載していません。
  1. ※22023年6月開催の定時株主総会終了後の取締役会より出席
  2. ※32024年6月開催の定時株主総会にて就任

新任社外取締役メッセージ

リスク評価と挑戦
社外取締役
三島 愼次郎

私は長年、造船事業に携わってきました。資源の少ない島国日本において、大量の「海上物流」を支え、資源の「海洋海底開発」、「海上の安全防衛」という点からも「造船事業」はなくてはならないものとして取り組んできました。しかしながら、需要変動に伴い海外との激しい受注競争、材料費の高騰、急激な円高等に常に悩まされていました。

同じ建造業として日揮グループは、1928年の会社設立以降、地球の営み上、なくてはならないエネルギーの確保、そして様々な分野へのエネルギー活用に携わっており、大変重要な役割を担って現在に至っています。

これから、国際的にCO2削減、すなわち新しい代替エネルギー源が叫ばれるなかで、日揮グループにとって大変なビジネスチャンスが訪れていると思います。

一方で、EPCをベースとしたエンジニアリング事業は、案件ごとの規模も大きく、カントリーリスクをはじめ、様々なリスクを抱えています。これを受注前に分析し、高い技術力およびまとめ上げるチーム力でいかに対応していけるかが極めて重要だと思います。各国からの強い要請、重要顧客からの期待、身の丈を超えた大きな案件への挑戦意欲、いつの間にか何としても受注しなければという雰囲気に追い込まれる場面が多々あると思います。こういった場合、失敗した時には大変な痛手を負うのが常です。受注時にどれだけ冷静に分析できるかが重要です。

2023年度は損益上、厳しい結果となりましたが、これをしっかりと受け止めバネに変えて、さらに飛躍につなげていかねばと思います。微力ながら、その一助となって日揮グループの発展につなげていきたいと思っているところです。


日揮グループへの貢献を通して、
より良い社会を引き継いでいく
社外取締役
平野 未来

私はAIの研究をしながら、学生時代にスタートアップを設立して以来、20年近くデジタルやAIの会社を経営しています。成功も失敗も経験してきたことにより、新しく事業を起こすことへの理解を深めてきました。これから日揮ホールディングスの社外取締役として、その経験を活かして日揮グループの新しい変革に貢献できることを楽しみにしています。

私自身の人生を通したミッションは「子どもたちにより良い社会を引き継ぐこと」です。私自身の3人の子ども、まだ見ぬ将来の孫たち、日揮グループ社員の、そして全世界の子ども、孫たちに向けて、本心からそう思っています。2023年、国連事務総長が「人類は地獄への扉を開けてしまった」と発言しています。2024年の夏も記録的な暑さを更新しています。子どもたち・孫たちのことを考えると、日揮グループが目指す「エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立」、「資源利用の環境負荷低減」、「持続可能なインフラとサービスの提供」という目標に対しては、強く共感するだけでなく、必ずやり遂げたいと思っています。

また、特に若い世代の従業員とのコミュニケーションを大切にして、彼らの新しいアイデアやエネルギーを会社の成長に活かせるよう、私自身も学びながら、彼らと一緒に日揮グループの、そして地球の明るい未来を形づくっていくつもりです。

社外取締役として「Enhancing planetary health」を築くための一助となれば幸いです。

経営陣幹部の選解任に関する方針と手続きについて

選任プロセス

経営陣幹部の選任および取締役候補者の指名

  1. 1.社外取締役が過半数を占めかつ社外取締役が委員長を務める指名委員会において、以下の項目を中心に審議
    1. (1)人格・見識などの共通項目
    2. (2)経営陣幹部および社内取締役については、後継者計画で定める経験・実績およびマネジメント能力など
    3. (3)社外取締役については、独立性および専門性など
  2. 2.指名委員会において総合的に審議を行った後、取締役会で決定
    なお、経営陣幹部の選任、および取締役候補者の指名については、当社CEOの後継者候補となることを認識し、上記のプロセスを経て十分な議論を行い、選任・指名

解任プロセス

経営陣幹部の解任

以下の項目に該当があった場合、指名委員会において審議のうえ、取締役会にて解任を決定

  1. (1)不正・不当・背信行為があった場合
  2. (2)法令・定款違反があった場合
  3. (3)選任時に求められる資質・能力が認められなくなった場合

後継者計画について

後継者計画は持続的な企業価値向上のための重要事項と認識し、指名委員会、および取締役会における議論を踏まえ、以下のとおり後継者計画の運用を開始しております。

後継者計画の目的

  • BSP2025、2040年ビジョンを実現し、さらにその先にわたって永続的に企業価値を向上させていくためには、その時々の事業環境、および経営戦略に最も適合したトップマネジメントを登用することが必要不可欠であると認識している。
  • 後継者計画は、そのようなトップマネジメントを継続的に登用することが可能となるよう事業環境および経営戦略に基づき、トップマネジメントに求められる知識・経験、能力、資質等の人財要件を明らかにし、次期トップマネジメントの育成・人選に役立てることを目的としている。

人財要件の考え方

  • 人財要件の設定にあたっては、2019年度において第三者機関を通じてトップマネジメントにヒアリングを行い、中長期的な経営ビジョンを起点とし、将来必要な経営人財像を定義した。
  • 抽出された人財要件ごとに、「各候補者群に選抜される段階で最低限身に着けているべきMust要件」、および「各候補者群に選抜される段階で身に着けていることが望ましいWant要件(3段階)」に分類し、各候補者群において求められる程度を設定している。

後継者計画の考え方

  • トップマネジメントに必要な人財要件を定めて次期、および将来候補者群を複数名選抜し、不足している人財要件を満たす機会を与え経験を積ませ、毎年のモニタリングで育成状況を確認しながら中長期的にトップマネジメント候補を育成していくことを当社の後継者計画の基本的な考え方とし、運用を開始している。
  • 上記の考え方に基づき、将来候補者群育成プログラムのさらなる強化・拡充策として、社外の教育・研修プログラムへの派遣や外部講師を招いた定期的な講義の実施、継続的な議論の場の提供等、各種施策を実施している。

遠藤社外取締役メッセージ

日揮グループの“応戦”
社外取締役
指名委員会委員長
報酬委員会委員
遠藤 茂

取締役会は、このたび新たに社外取締役2名と社内取締役1名のメンバーを迎え、10名の体制になりました。これに先立ち、指名委員会は、取締役会のスキルとメンバーの多様性を図るための検討を行ってきた経緯がありますが、取締役会に新たなメンバーを迎えたことで議論の幅が一層広がりました。また、同委員会は日頃から日揮グループ全体のマネジメント体制についても議論を行っています。例えば先般、日揮グローバルおよび日揮のマネジメントについて検討を行い、結果、両社のマネジメント体制に変更が加えられました。さらに今後は、後継者育成計画や女性活躍等の議論も進めていく必要があると考えています。

さて、2021年度に続き、2023年度においても損失を計上したことは大変に残念でした。現在その原因を特定し、対応措置が取られつつあります。目まぐるしく変化するビジネス環境のもとでも、中期経営計画「BSP2025」や長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の方向性は維持しつつも、当面はEPC遂行体制の早急な立て直しを図る必要があります。また、「高機能材製造事業の拡大」および「将来の成長エンジンの確立」にも力を注いでいかなくてはなりません。当社グループは今、正念場を迎えていると言っても過言ではないと思います。

当社グループの歴史を振り返ると、常に試練のなかで生き延びてきたことに気づきます。つまずくこともありました。しかし、つまずくたびに立ち上がり、結果としてより強く、より大きな価値を生み出してきました。このことを“反脆弱性”と呼ぶ人がいますが、私はこれが当社グループのDNAであると思います。「BSP2025」開始以降も、脱炭素気運の高まりやコロナ禍があり、さらにロシアのウクライナ侵略、ガザ紛争等の地政学上の試練を受けてきました。これに対し当社グループは、懸命に応戦してきました。今後もこの試練と応戦のなかで、当社の“反脆弱性”はさらに鍛えられていくと思います。

役員報酬について

役員の報酬などの額またはその算定方法の決定に関する方針

基本方針、および株主総会決議について

  • グローバルな競争力を高め、中長期的な企業価値の向上のために必要な経営人材を確保することを基本方針として、 2009年6月26日開催の第113回定時株主総会の決議により、報酬限度額は取締役年額6億9,000万円以内、監査役年額8,800万円以内と決定
  • 取締役の個人別の報酬などの額、その算定方法や構成割合の決定に関する方針については、上記株主総会の決議の範囲内に限定し、事前に、社外取締役が過半数を占め、かつ社外取締役が委員長を務める報酬委員会において審議され、その答申を踏まえて取締役会で決議

報酬決定プロセスについて

  • 公正性、および透明性、ならびに本決定方針との整合性を十分に確保するため、報酬委員会において、各取締役の評価および報酬金額について総合的に審議のうえ、その審議結果に基づき代表取締役会長が決定
  • 代表取締役会長は、当社の最高経営責任者として、各取締役の職務・職責、職務の成果、および当該成果の企業価値向上に対する貢献度合いを最も熟知している者として取締役会より委任を受けており、その権限は、上記株主総会の決議により定めた報酬限度額の範囲内に限定される
  • 取締役会は、最終決定の内容が本決定方針に沿うものであると判断しており、判断を行うに際し、報酬委員会における審議の概要、および結果、ならびに代表取締役会長による最終決定内容について報告を受けている

報酬構成、および内容について

  • 社外取締役を除く取締役の報酬は、金銭報酬と株式報酬で構成されており、金銭報酬は固定報酬と賞与、株式報酬は業績非連動型株式報酬と業績連動型株式報酬で構成
  • 報酬構成割合は、業績達成度、および役位が上がるにつれて、賞与と株式報酬を合わせた変動報酬の割合が高くなる設計

役員区分ごとの報酬などの総額、報酬などの種類別の総額、および対象となる役員の員数

  • (注1)2023年度末現在の取締役は7名(うち社外取締役3名)、監査役は5名(うち社外監査役3名)です。
  • (注2)上記の業績連動報酬(金銭)および業績連動型株式報酬は、業績評価指標に係る目標を達成しなかったため、付与はありません。
  • (注3)当社には報酬等の総額が1億円以上の役員はいないため、個別報酬の開示はしていません。

松島社外取締役メッセージ

役員報酬制度の改革を推進
社外取締役
報酬委員会委員長
指名委員会委員
松島 正之

当社グループにとって、次の50年、100年に向けて持続的に成長していくためには、的確な事業戦略、技術開発に加え、それらを担うに足る人財戦略が不可欠です。特にグローバルに事業を展開している当社グループにとって、世界で活躍できる人財を確保することが必須です。

こうした大方針を実現するためには、もとより働きがいや職場環境の整備が大前提ですが、同時に給与体系や給与水準が実力や実績を反映したインセンティブのあるものでなければなりません。

社外取締役が半数以上を占める報酬委員会(委員長は社外取締役)では、外部の意見を踏まえたより客観的な視点に立って、報酬制度の改革に取り組んでいます。金銭と株式からなる役員報酬については、2019年に譲渡制限付株式報酬を導入し当社株価との連動性を強めてきました。さらに2024年7月からは業績連動型株式報酬を導入することで、業績連動比率を引き上げており、2023年度赤字決算部門(事業会社)では厳しい査定がなされています。同時に個々の報酬額についても、審議を尽くしています。

こうした事項は、報酬委員会の審議を経て、取締役会のアジェンダとして採決され、実施に移されています。

取締役会の実効性評価について

当社は、毎年取締役会の実効性について分析・評価を実施し、改善状況を確認するとともに、さらなる実効性向上のための課題について取締役会で議論し、改善を図ることにより、取締役会の実効性の向上を図っています。2022年度の取締役会実効性評価のプロセス、および前年度(2021年度)の取締役会評価結果を踏まえた取り組み状況、ならびに今回の評価結果を踏まえた今後の対応方針は、以下のとおりです。

評価プロセス

評価の結果

アンケートの分析・評価の結果、当社の取締役会は現状において適切、かつ有効に機能していることが確認されました。評価結果の詳細は以下のとおりです。

当社の取締役会の実効性向上に向けた主な取り組み

八尾社外取締役メッセージ

改革実現を支えるグループガバナンス
社外取締役
指名委員会委員
報酬委員会委員
八尾 紀子

2023年度の最終損益は、誠に遺憾ながら、主に海外EPC事業の採算悪化により、損失を計上する結果となりました。

取締役会では、採算悪化の原因分析や、課題、対応策について議論を重ね、人的リソースの適正配置や事業管理体制の見直し、強化等の施策が進められています。

EPC事業は、見積開始から完工に至るまで長期の年月にわたるプロジェクトであり、最近の地政学リスクを含む事業環境の急激な変化のなかにおいて、「先読み力」や「リスク対応力」がますます問われているものと感じています。そのため、当社グループの経営に重大なインパクトを与えることから、適時・的確なモニタリングとその強化・実践は重要な課題の一つと捉えています。

長期経営ビジョン「2040年ビジョン」に掲げる、事業領域の拡大および事業モデルの多角化の実現に向け、現在、グループ各社において様々な取り組みが同時並行で進行しています。そのような局面においてふさわしい、持株会社によるグループ全体の適切なリスク管理、および人的資本を含む経営資本の配分は、持続的成長を支える基盤構築として重要な課題という認識のもと、グループガバナンス体制についても引き続き注視していきたいと思います。

取締役会の実効性向上のため、2023年度は、取締役会とは別に、EPC事業のガバナンス強化施策に関する勉強会や、取締役によるオフサイトミーティングも開催されるなど、持株会社である当社の取締役会の役割、機能、あり方に関する議論を深める取り組みも行われました。また、異なる知見・経験を有する新たな社外取締役2名が加わり、今後、さらに多角的な観点からの議論が深化することも期待されます。

先述の課題意識も踏まえ、中期経営計画「BSP2025」のその先も見据えた持続的成長と企業価値の向上に向け、取締役会の実効性をさらに高め、株主の皆さまの負託に応えられるよう、引き続き尽力していきます。

政策保有株式

1. 保有の目的

当社は、取引先や業務提携先との関係を維持・強化することで、当社グループの中長期的な企業価値の向上に資すると考えられる場合を除き、当該企業の株式を保有していません。毎年取締役会において個別の政策保有株式の保有意義の検証を行っており、各銘柄のTSR(株主総利回り)のチェックならびに当該銘柄のROEおよび数値化困難な事業上の便益等が当社の株主資本コストに見合っているかなど、定性・定量両面から検証し、保有意義の薄れた株式については、市場環境・株価動向などを勘案のうえ、売却について検討を行うこととしています。

2. 保有株式の議決権行使基準

政策保有株式の議決権行使にあたっては、保有先企業の持続的な成長につながり、その結果として当社グループの中長期的な企業価値の向上につながるかを勘案のうえ、賛否を判断しています。