戦略的な知財・無形資産の活用

当社グループにおける知財・無形資産の活用形態は、おおよそ5つのカテゴリーに分類されます。それぞれの活用に適した知財・無形資産の保護(知財ミックス)やノウハウなど、技術情報の管理体制の見直しを行い、事業の優位性確保と新規事業の創出により企業価値の向上を図っています。

【日揮グループの知財・無形資産活用形態例】
既存ビジネスの拡大 オイル&ガス、再生可能エネルギー、ライフサイエンスなどの既存分野におけるEPCプロジェクト受注への貢献、自己実施の確保、機能材製造事業の拡大、コストダウン技術による競争優位性の確保
ライセンシング活動 低・脱炭素化、クリーンエネルギー、ケミカルプロセスなどに関する技術ライセンス
新市場参入または非EPCモデルの確立 ケミカルリサイクルなど、他社との共創や新ビジネス創出の足掛かり、参入障壁の構築
デジタルソリューションサービスへの展開 プラント運転の安定化・生産性向上サービス、プラントメンテナンス、安全リスク評価などのソフトビジネス
システムの構築 熟練エンジニアの経験やナレッジ・ノウハウなどの「暗黙知」を「形式知化」した各種社内システムの構築

当社グループの知財・無形資産活用の取り組み事例についてご紹介します。

LNG生産設備の総合エンジニアリングの提供

液化天然ガス(LNG)生産プラントの建設におけるリーディングカンパニーである日揮グループは、約半世紀にわたる経験と専門性を活かして世界の全生産量 30%以上を占めるLNG生産プラントの建設プロジェクトに携わってきました。また、顧客の「LNG事業」のEPCサポート、新設計画、安定したプラント運転、さらに効果的な投資によるLNG増産および省エネルギーによる温暖化ガス削減など、ライフサイクルの各フェーズにおいて、当社グループが有する様々なLNG関連技術の中から、LNGプラントの価値を最大限に高めるソリューションを提供しています。様々なソリューションの提供により培われたナレッジ・ノウハウおよび知的財産権を駆使して、洋上設備、モジュール建設工法、プラントの運転制御、バリューチェーン全体の低・脱炭素化など、様々な事業・技術にも展開しています。

医薬品関連設備におけるイノベーション

日揮グループではヘルスケア・ライフサイエンスを主要事業の一つに掲げ、世界的な人口増加、高齢化社会、医療水準の高度化への対応を進めています。1980年代以降に参入した医薬品製造設備・施設の建設における豊富な実績と厳しい設備要求に応えるプロジェクト提案力や様々な技術を組み合わせた柔軟な発想を強みとしています。
近年、多品種生産設備における作業員の安全性確保や経費削減などへの顧客ニーズが高まっています。こうした顧客の課題をいち早く把握し、固形製剤工場の建設に長年携わってきた当社グループは、簡易な容器蓋開閉機構「BLAT®」※を発明し、容器の気密性担保および容器の開閉に係る工程の自動化を図りました。その結果、容器の小型化と作業員の削減を同時に実現しています。1台のロボットで開閉操作を含めすべての小型缶ハンドリングが可能となり、コスト削減およびメンテナンス省力化のメリットも備えています。加えて、製剤への異物混入リスクを低減することができ、上部からの原料供給がなくなることから従業員の階段昇降がなく、製品および作業員の双方にとって非常に安全性の高い工場を提供することが可能となりました。
医薬品に限らず、食品、化粧品をはじめ、化学製品などにも適用分野が広がっています。

  • 「BLAT®」:六菱ゴム株式会社との共同開発

プラントレイアウト設計手法「Auto Plot PATHFINDER®」による設計業務最適化

プラント設計を行ううえでプロットプランはプラントレイアウトの起点であり、各ユニットや機器の配置を最適化し、顧客の初期投資(CAPEX)や維持・運転費用(OPEX)の削減、およびプラントのメンテナンス性や拡張性を考慮しながら作成する必要があります。このため、プロットプランを作成するエンジニアには、プロセス技術に対する知識や理解だけでなく、幅広い技術と多くの経験が求められます。
これまでは熟練したエンジニアの暗黙知であった設計ナレッジ・ノウハウなどに頼っていたものを、形式知化・コード化されたシニアの知識・技術と、AIによるユニット分割を組み合わせて、人間が思いつかない多くのレイアウト提案を瞬時に行う新しい提案型設計手法がAuto Plot PATHFINDER®です。高い専門性を有するエンジニアによる厳しい評価とレイアウトの調整(ノウハウ)により、基本設計段階から顧客が希望する最適なプラントデザインを提供し、迅速かつ緻密なプラントEPCサービスを実現します。
このように、プロジェクトを通じて培った熟練エンジニアの設計など、各種ナレッジ・ノウハウの「暗黙知」を「形式知化」し、新たなシステムの構築につなげる活動を他業務にも展開しています。

金属セラミックス複合材「MMC」の用途拡大

当社グループの日本ファインセラミックス株式会社が開発したMMC(Metal Matrix Composites)は、金属とセラミックスの複合材料であり、軽量高剛性で放熱性に優れ、かつ熱収縮が少ないことから、半導体、液晶の製造装置用ステージ部品や検査装置用ガイド部品など、幅広い用途に採用されています。精緻なデザインを可能とする高機能な特性が評価され、小惑星探査機「はやぶさ2」の部品に採用されました。
MMC以外にもエンジニアリングセラミックスやエレクトロニクセラミックスなどの各種セラミックス製品の特性を活かした用途開発にも力を入れています。

マイクロプラスチックビーズの海洋流出量削減に貢献する代替材料の開発

近年、マイクロプラスチックと呼ばれる微細なプラスチックが海洋や湖沼に長期間蓄積され、生態系を含めた環境への悪影響が懸念されています。マイクロプラスチックの一つに化粧用品の微粒な感触改良剤(マイクロプラスチックビーズ:MPB)があり、化粧品材料として使用されていますが、近年、多くの国や地域でその使用規制が検討され、代替材料の適用が望まれています。このようなニーズが高まる中、当社グループの日揮触媒化成株式会社は、世界中のコスメユーザーが目指す「Clean Beauty」に賛同し、さらにかけがいのない地球の環境を守るために、同社が持つナノ材料制御技術を活かしてマイクロプラスチック代替となるミネラル&ボタニカル素材のシリカビーズ製品「CHIFFONSIL」、米由来のデンプン粒子「OSSfEC」を開発しました。顧客となる化粧品メーカーに提案し、採用されています。