CFOメッセージ

持続的な成長を支える財務施策を実行 取締役 副社長執行役員CFO 寺嶋 清隆 1981年当社入社。法務部門にて業務提携や国内外プロジェクトの契約業務などに従事。2014年執行役員経営統括本部長代行、2016年取締役執行役員経営統括本部長、2017年取締役常務執行役員経営統括本部長、2018年取締役専務執行役員経営統括本部長CFOを経て、2020年4月より現職。持続的な成長を支える財務施策を実行 取締役 副社長執行役員CFO 寺嶋 清隆 1981年当社入社。法務部門にて業務提携や国内外プロジェクトの契約業務などに従事。2014年執行役員経営統括本部長代行、2016年取締役執行役員経営統括本部長、2017年取締役常務執行役員経営統括本部長、2018年取締役専務執行役員経営統括本部長CFOを経て、2020年4月より現職。

1. 現状認識とCFOとして果たすべき役割

現在、当社グループは、原油価格の下落や新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の世界的な感染拡大などにより不透明な様相を呈しているマーケット環境のなかで、2020年度の受注目標、および業績見通しの確実な達成と、企業グループとして将来にわたって持続的な成長を実現していくための長期ビジョン(2040年ビジョン)の策定という2つの命題にグループを挙げて取り組んでいる状況にあります。
私はCFOとして、この2つの命題に対する取り組みを財務施策によって支えていきたいと考えています。

2. 健全な財務基盤の維持

当社グループは、総合エンジニアリング事業における巨大プロジェクトの受注・遂行のため、短期的な市場動向に左右されない健全な財務基盤を維持するとともに、大型投資に対する機動的な資金調達余力を確保するため、自己資本比率50%以上を安定的に維持することを目標としています。2015年から2017年にかけプラントマーケットが低迷するなかにあっても規律ある財務運営を継続することにより健全な財務基盤を築き上げてきました。自己資本比率は2019年度末で58%となっています。
2020年に入り、OPECプラスによる協調減産の破綻から原油価格が下落し、更にCOVID-19の感染拡大によってエネルギー需要が減少したことから、総合エンジニアリング事業、機能材製造事業ともにマーケット環境は先行き不透明な状況となっています。当社グループとしてこうした厳しい環境を勝ち抜いていくために、健全な財務基盤の重要性は一層高まっていると認識しています。

自己資本比率の推移

3. 手元流動性の状況と配分方針

手元流動性については、イクシスLNGプロジェクトの立替支出の終了、およびアルジェリア案件での資金回収が進んだことによる営業キャッシュ・フローの増加、ならびに政策保有株の売却や保有意義の見直しに伴う事業投資資産の売却による収入などがあり大幅に改善しました。2019年度末の現金及び現金同等物残高は、2018年度末比で約1,000億円増加し2,618億円となりました。
当社グループの資金需要は、総合エンジニアリング事業におけるプロジェクトの安定的な遂行のための十分な運転資金および業務効率向上のためのAI/IoT投資、機能材製造事業の設備投資、ならびに新たな柱となる可能性を持つ分野の探索、事業化のための成長戦略投資などがあります。こうした資金需要への対応は、手元資金の活用を中心に検討していく方針です。

4. 資本効率の向上に向けて

当社グループは、株主資本コストを念頭にROE(株主資本利益率)の目標を10%以上としています。2016年度に最終赤字を計上して以降進めてきたプロジェクトリスク管理の強化が奏功し、ROEは2017年度4.3%、2018年度6.0%と改善しましたが、2019年度は、外国税額の増加などにより法人税などが増加したことに加え、COVID-19の感染拡大による遂行中プロジェクトへの影響の一部をリスクとして工事採算に反映したことから、親会社株主に帰属する当期純利益が減少し、ROEは1.0%に低下する結果となりました。

親会社株式に帰属する当期純利益・売上総利益率・ROEの推移

ROEの改善のために当社グループに必要なことは、徹底したプロジェクトリスク管理の継続とコスト削減により遂行中の案件および新規受注案件から確実に利益を創出していくことです。加えて、資源マーケットの変動に左右される海外オイル&ガス事業だけに依存することなく、海外インフラ事業、国内事業を含めた3事業で構成する総合エンジニアリング事業と機能材製造事業から安定的、かつ確実に利益を創出し、更にそれを拡大させていくことであると考えています。また、現在策定中の長期ビジョン(2040年ビジョン)では、資源、環境、社会、健康といったこれまで以上に幅広い社会課題の解決を通じて、持続的な成長を実現していく方向性となる見通しであり、利益創出の可能性は更に高まっていくことが期待されます。私はCFOとして、投資案件のリスクとリターンを適切に評価したうえで、成長投資へのタイムリーかつ的確な資源配分を行い、利益拡大を通じて資本効率向上を実現していきたいと考えています。

5. 株主還元

当社グループは、株主の皆さまへの利益還元を経営の重要課題の1つとして位置付け、現金配当をその基本とし、配当性向として親会社株主に帰属する当期純利益の30%をめどとすることとしています。2019年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、期初に発表した予想数値を下回る結果となりましたが、手元流動性の状況などを勘案し、期初発表どおりの1株当たり12円の現金配当を実施しました。2020年度は、同額の1株当たり12円を予定しています。
自己株式取得については株主還元策の1つと認識し、マーケット環境や業績の見通し、手元資金の保有状況、株価の推移、今後の成長戦略投資の資金需要などを総合的に勘案のうえ検討いたします。
株主・投資家の皆さまにおかれましては、引き続き、ご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。