2017年ニュースリリース

2017/03/09

世界初の「中低温排ガス向け乾式脱硫・脱硝システム」を中国で事業展開

―大気汚染防止法の適用範囲拡大に対応―

日揮株式会社(JGC CORPORATION)(代表取締役会長 佐藤雅之、横浜本社 横浜市西区みなとみらい2-3-1)は、世界初の低温から中温までの排ガス向け乾式脱硫・脱硝システムを開発し、中国で排ガス規制が強化されたコークス炉など向けに、技術供与およびシステム導入に関する事業展開を図っておりますので、お知らせいたします。

中国では、2015年8月に大気汚染防止法が改正され、コークス炉、セメント工場、ゴミ焼却炉、製鉄会社の焼結炉からの排ガスに対する硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、煤塵に対する規制が強化されました。しかしながら、これら設備の排ガスの脱硫・脱硝装置においては、石炭火力発電所からの高温排ガス(300℃以上)と比較して、排ガス温度が低いことから(300℃~100℃)、かねてから下記の課題が指摘されておりました。

  1. (1)中低温排ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOx)が、脱硝の還元剤として使用するアンモニア (NH3)と反応して、脱硝触媒上に酸性硫安として析出し触媒寿命を著しく毀損するため、脱硝の前に十分な脱硫を行う必要がある。
  2. (2)石炭火力発電所の排ガスの脱硫技術で一般的に用いられている湿式脱硫法では、水を使用するため排ガス温度が低下することから、後段の脱硝過程で十分な脱硝を行うためには、排ガスを再加熱する設備、そのための燃料、ならびに排水処理設備が必要となる。
  3. (3)石炭火力発電所向けの従来の高温脱硝触媒では、低温排ガスでは十分な性能が発揮できないため、低温でも高い脱硝活性を発揮する脱硝触媒を供給する必要がある。

日揮は、大気汚染防止法が強化された中国での事業展開を視野に入れ、2013年から排ガス温度が低下せず、水を使わないため排水処理の必要がなく、かつ100℃から300℃以上まで幅広い温度範囲で高い脱硫性能を示す乾式脱硫法と、低温脱硝触媒の組み合わせによる世界初の中低温排ガス向けの脱硫・脱硝システムの開発を進めてまいりました。

乾式脱硫技術では、北海道電力(株)(本社:北海道札幌市中央区。代表取締役社長 真弓 明彦氏)が開発し、1991年に1号機が北海道電力(株)苫東厚真発電所で稼働している石炭灰利用乾式脱硫技術を採用し、低温脱硝触媒では日揮グループ会社である日揮触媒化成が開発した、排ガス温度が200℃以下でも高い脱硝活性を発揮し、ゴミ焼却炉の低温排ガス向け脱硝設備に多くの納入実績を有する低温脱硝触媒を採用いたしました。

また、乾式脱硫設備のコストダウンにも取り組み、(株)セテック(本社:北海道札幌市中央区。代表取締役 瀬戸弘氏)によるスリム化した脱硫塔を採用いたしました。

日揮は、2015年より脱硫・脱硝システムの中国での事業展開を推進し、中国内モンゴル自治区烏海市にあるコークス製造企業美方コークス化公司のコークスガス燃焼排ガス向けに技術供与を行い、中国のエンジニアリング企業北京宝塔三聚能源科技有限公司(以下宝聚)と協力して、開発した中低温排ガス向け脱硫・脱硝システムによる設備を納入、2016年8月から稼働を開始いたしました。この案件では、日揮が基本設計ならびに詳細設計審査、試運転指導、宝聚が詳細設計、ならびに機材調達、建設工事、試運転などの技術指導を行いました。

中国では、大気汚染防止法に対応するこの脱硫・脱硝システムが注目されており、宝聚は新たに同システムによる5件の脱硫・脱硝設備を受注し、日揮との協業で現在遂行しております。

日揮は、中国ではこの脱硫・脱硝システムに関し、今後コークス炉、のみならずゴミ焼却、ガラス工場への適用拡大が期待できることから、宝聚と協力して取り組み、将来的には両社出資による事業会社の設立も視野に入れて、マーケット拡大を図って行く予定です。

以上