2023年ニュースリリース
2023/04/26
LNG未利用冷熱を活用した、大気中のCO2 を直接回収する DACの技術確立に向けパイロット装置の開発に着手
日揮ホールディングス株式会社(代表取締役会長CEO 佐藤 雅之)は、国内EPC事業会社である日揮株式会社(代表取締役社長執行役員 山田 昇司。以下、日揮)が、このたび液化天然ガス(LNG)※1未利用冷熱を活用した大気中の二酸化炭素(CO2)分離回収:DAC(Direct Air Capture)の技術確立に向けたベンチスケール(試験装置)の詳細設計を完了し、パイロット装置の開発に着手することとなりましたので、お知らせいたします。
1. 背景
日揮は、名古屋大学などの提案が2020年8月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「ムーンショット型研究開発事業※2」(以下、本事業)に採択されたことを受け、名古屋大学の再委託先として2021年11月から本事業に参画し、DACの技術開発に取り組んでいます。
2. 本事業の概要
本事業では、LNGの未利用冷熱をDACに活用することにより、先行技術を凌駕するエネルギー効率で高純度かつ高圧CO2の回収を可能とする技術「Cryo-DAC®※3」の確立を目指しています。ベースとなる技術は、名古屋大学大学院 則永 行庸教授が開発したもので、CO2分離回収コストを低減する可能性を秘めた技術として注目されています。
これまで日揮は、則永教授と共同で、年間1トンのCO2を分離回収する「Cryo-DAC®」ベンチスケールの詳細設計や、本設計のための要件定義を行ってきました。本設計が2022年度末に完了したことから、年間50トンのCO2を回収するパイロット装置の開発(設計・設備コスト試算等)を進めることとなりました。
将来的には、装置を一層スケールアップし、2029年度末に商用プラントの概念設計が完了する計画です。
3. 日揮が参画する意義・方針
日揮グループは、LNGプラントやLNG受入基地のEPC事業で培ってきた極低温域における知見を活かし、LNG未利用冷熱を有効活用するとともに、パイロット装置の設計等を通じてCO2分離回収技術の実用化の可能性を検証し、商用プラントの設計ならびにスケールアップに貢献できると考えます。
日揮グループは、2021年5月に発表した長期経営ビジョン「2040年ビジョン」と中期経営計画「BSP 2025」に基づき、低・脱炭素社会の実現に向けてエネルギートランジションの取り組みを加速させています。CO2分離回収技術もエネルギートランジッションを実現する重要な技術の一つとして捉え、本事業に参画しています。当社グループは、革新的な環境技術を有する企業や大学などとの協業・連携を進め、当社グループのエンジニアリング技術を活用することにより優れた技術の商用化に貢献し、ひいてはスムーズなエネルギートランジションの実現に貢献してまいります。
※1 LNGは天然ガスをマイナス162度に冷却した液体で、LNG受入基地で再ガス化する際、多くの冷熱が放出される。この冷熱は十分利用されていない一方で、動力や電力も生み出すことができるエネルギー源として近年注目を集めている。
※2 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が決定したムーンショット目標と、経済産業省が策定した研究開発構想を踏まえた挑戦的な研究開発事業
※3 冷熱を表す「Cryogenics」の「Cryo」(クライオ)と、大気中からのCO2回収「DAC」(ダック)を組み合わせた造語
【大気中のCO2分離回収の取り組み概要】
プロジェクト名 | 冷熱を利用した大気中二酸化炭素直接回収の研究開発 |
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目 的 |
・LNG未利用冷熱を活用し、大気中のCO2を回収する技術「Cryo-DAC®」を用いたパイロット装置の開発完了 ・商用プラントの概念設計完了 |
主な研究開発 |
・化学吸収法によるDACを、LNG未利用冷熱によって抜本的に省エネルギー化する技術を開発 ・ベンチスケール(試験装置)によってCryo-DAC®実用化の可能性を検証 |
研究体制 |
・名古屋大学大学院工学研究科 則永 行庸教授(プロジェクトマネージャー) 再委託先として、日揮、東京大学大学院工学系研究科(伊藤研究室) ・東邦ガス株式会社 再委託先として、中京大学、東京大学大学院総合文化研究科(苷蔗研究室) ・東京理科大学(田中優実准教授) |
研究機関 |
2023年度~2024年度の2年間 (事業全体の期間は2020年度から最長2029年度までの10年間に設定されているが、2024年度末に中間評価を受けることが前提となる) |