2022年ニュースリリース

2022/10/31

LNG未利用冷熱を活用した、CO2分離回収の技術開発を開始

― 工場排ガスのCO2 を直接回収する技術の確立を目指す―

日揮ホールディングス株式会社(代表取締役会長CEO 佐藤雅之)は、国内EPC事業会社である日揮株式会社(代表取締役社長執行役員 山田昇司 以下、日揮)が、このたび液化天然ガス(LNG)未利用冷熱を活用した二酸化炭素(CO2)分離回収に係る技術開発の取り組みを開始しましたので、お知らせいたします。


本技術開発は、東邦瓦斯株式会社(以下、東邦ガス)と国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(以下、名古屋大学)が共同提案し、20225月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」に採択された「LNG未利用冷熱を活用したCO2分離回収技術開発・実証」(以下、本開発・実証)における取り組みで、日揮は東邦ガスの再委託先として本年9月より本開発・実証に参画しています。


本開発・実証では、LNG未利用冷熱の活用により、工場排ガスに含まれるCO2を分離回収する技術「Cryo-Capture®」の開発・実証に取り組みます。ベースとなる技術は、名古屋大学未来社会創造機構 則永行庸教授が開発したものであり、CO2分離回収コストの低減に向けて、LNG未利用冷熱を活用することによって少量のエネルギーで工場排ガスのCO2を分離回収する革新的な技術です。

  • ※冷熱を表す「Cryogenics」の「Cryo」(クライオ)と、排ガスなどからのCO2回収「Capture」(キャプチャー)を組み合わせた造語。

LNGは天然ガスをマイナス162度に冷却した液体で、LNG受入基地で再ガス化する際、多くの冷熱が放出されます。この冷熱は、十分利用されていない一方で、動力や電力も生み出すことができるエネルギー源として注目を集めています。


日揮グループは、LNGプラントやLNG受入基地のEPC事業で培ってきた極低温域における知見を活かし、LNG未利用冷熱を有効活用するとともに、試験装置の設計等を通じてCO2分離回収技術の実用化の可能性を検証し、将来はパイロットプラントの設計ならびにスケールアップにも貢献できると考えています。また、日揮グループは「カーボンニュートラルの実現」を中長期の重点領域と位置付けており、CO2の分離回収を重要な技術の一つと捉え、本開発・実証への参画を決定しました。


試験装置の設計において、具体的には、窒素等の不純物やCO2濃度、分圧の関係から設備の構造および運転条件に適した吸収液や機器、圧力制御方法等を検討します。日揮は、こうしたプロセス概念設計および各種設備の最適化設計の観点から支援していく予定です。


日揮グループは今後も、革新的な環境技術を有する企業や大学との協業・連携などにより、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。


本開発・実証の概要:

目  的 ・産業部門の脱炭素化に向け、工業排ガス(大気圧でのCO2濃度10%以下の低圧・低濃度ガス)などを対象に、低コストでCO2を分離回収するための技術を確立
主な技術開発

・LNG未利用冷熱を活用し、従来法の約10%の投入エネルギーでCO2を分離回収する技術「Cryo-Capture®」の開発および都市ガス工場でのパイロット実証

・回収したCO2と水電解等で製造した水素を原料として、メタネーション技術を用いた合成メタン製造まで含めたカーボンリサイクルに関する実証

実施体制

・東邦ガス(本開発・実証の幹事会社)

 再委託先として、日揮

・名古屋大学

 再委託先として、学校法人中央大学、国立大学法人九州工業大学、および国立大学法人九州大学

事業期間

2022年度~2030年度の9年間(予定)

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LNG未利用冷熱を活用したCO2分離回収(工場排ガス対象)のイメージ