急激な人口増加と都市化に伴うエネルギー不足の改善や、社会インフラ基盤の整備、低炭素社会に向け加速化するクリーンエネルギー需要への対応。そういった、社会が求めるものをいち早く実現することが、当社が掲げているエンジニアリング会社としての使命です。ここでは、あらゆる困難を乗り越え、高い社会貢献度を持ち、世界の人々の暮らしを根底から支えている8つのプロジェクトをご紹介します。
アルジェリアで40年以上の実績を持つ当社が受注した本プロジェクトの建設現場は、首都アルジェから南東約770km内陸にある、世界最大のサハラ砂漠でした。天然ガス集積・分離プラントとして、合計52ヶ所のガス田から生産される天然ガスを、総長360kmのパイプラインで中央処理設備へ集めるところからスタート。その後、セールスガス、LPG、コンデンセートの三つの中間製品に分離し、14km離れた輸送ターミナルに出荷しています。このプラントで生産されたガスは、地中海沿岸のLNGプラントに輸送され、LNGとして輸出されています。同国は世界9位の天然ガス生産国ですが、近年の急速な経済発展に伴い、国内のエネルギー消費量が急増しているため、天然ガスのさらなる増産を目指しています。そのため、ガス増産に大きく寄与する本プロジェクトにおいて、アルジェリア政府の期待は非常に高く、まさに待望のプラント完成となりました。砂漠という極限環境の中、本プロジェクト遂行中は数々の困難に直面しましたが、当社のプロジェクトチームは、危機的な状況においても柔軟な発想力を発揮。顧客スタッフも含め、まさにチーム一丸となって、契約納期内での完工を達成しました。
北緯71度、冬期の最低気温は零下50度。現地語で「最果て」を意味する、ロシア連邦ヤマロ・ネネツ自治区サベッタにて推進されているプロジェクトです。同国における二件目かつ、現在同国内で計画されているLNG案件の中でも最大級の規模。このヤマルLNGプロジェクトは、当社、テクニップFMC社、千代田化工建設株式会社の3社によるジョイントベンチャーが持つ豊富なLNGプラント建設経験と、優れたプロジェクト遂行実績が評価され、計画から推進へと駒が進みました。建設初期には、ヘリコプター以外のアクセス手段がなかった建設地は、まさに「陸の孤島」。そんな極地での建設工事を短納期で達成するため、建設地での工事量を最小化できるモジュール工法を最大限に活用していることが、本プロジェクトのポイントです。極寒地対応の設計、総重量56万トンにも達するモジュールを製作するファブリケーション・ヤードの管理、砕氷船利用による北極海航路での輸送(一部モジュールは夏場の北極海航路での輸送に成功)、北極圏(ヤマル半島)での現場工事。そういった困難を乗り越え、2017年12月に当初の計画通りに第1系列からの製品出荷を達成したのを皮切りに、2018年末までに第2系列、第3系列の完工を次々と達成しています。※EPSCC: Engineering, Procurement, Supply, Construction & Commissioning
本プロジェクトにおけるコンプレックスプラントは、重油留分を触媒の作用によって分解する世界最大級の「流動接触分解装置」と、エタンを原料としてエチレンなどの化学材料を生産する「エタンクラッカー」から構成されています。住友化学株式会社とサウジアラムコ社によって推進されたプロジェクトであり、当社が両社向けに石油精製・石油化学・ガス処理プラントなど数多くのプラント建設実績を有していたことに加え、これらの分野における豊富な経験が評価され、受注に至りました。しかし、受注当時の中東地域は、プラント建設ブームの真っ只中であり、プロジェクト遂行が大変困難な状況になることもありました。資機材価格の高騰と長納期化、大型輸送船の需要逼迫、さらに建設下請工事会社における熟練工不足。そういった環境の中でも、完成へと導くことができたのは、全社が一丸となって取り組めたからだと考えています。また当社は、本コンプレックスプラント向けに、25年間にわたり電力・水・蒸気を供給する付帯設備(IWSPP)への出資および同設備の建設を手掛け、その後の運営も行っています。さらに、本プロジェクトに携わる日本企業の海外進出のサポートを担うなど、当社にとって大変意義深いプロジェクトになりました。
※イメージ図
当社が2017年6月に受注した本プロジェクトは、最終投資決定済みの洋上LNGプロジェクトとして、世界で4例目かつアフリカ地域初となるプロジェクトです。これにより当社は、ペトロナス(マレーシア国営石油会社)向けFLNGプロジェクトと合わせ、4例中2件のEPCを手がけることになりました。洋上LNG(FNLG:Floating LNG)とは、海洋ガス田から取り出された天然ガスを精製、液化し、貯蔵、出荷するために船上などに作られたLNGプラントです。本プロジェクトにより建設されるFLNGは、世界初の水深2,000mを超える深海ガス田向け。海洋油ガス業界における、非常に先駆的なプロジェクトだと言えます。洋上LNGの建設は、多くの技術課題への対応が求められ、非常に難易度が高いプロジェクトであることから、実績を有するコントラクターは当社を含め世界で2社しかありません。(※波の高い外洋での設置が可能かつ、1系列当たりの液化処理能力が数百万トンクラスの本格的な洋上LNGに関して)そういった背景の中、本プロジェクトが受注に至った要因は、大きく三つ。一つは、当社とテクニップFMC社が有するFLNG分野におけるトップクラスの実績と卓越したEPCIC遂行能力。二つ目は、サムスン重工業の同分野における高い造船技術。三つ目は、FEED役務遂行およびEPC入札において発揮された、当社の高いプロジェクトマネジメント能力による強力なリーダーシップです。また、モザンビークは、近年に入り世界有数の大型ガス田が発見され、複数のLNGプラントが計画されており、本プロジェクトは、当社の同国における事業展開の橋頭堡になると期待されています。※EPCIC: Engineering, Procurement, Construction, Installation & Commissioning
本プロジェクトは、ベトナムの一般家庭47,000世帯分の年間使用電力量に相当する、約49 MW(交流)の出力を誇るメガソーラー発電所を、ベトナム中南部に位置するザライ省クロンパ地区に建設するものです。当社グループは、ベトナムにおいて2件の大型製油所建設プロジェクトに携わっており、2009年に設立したJGCベトナム社は、産業プラント分野を含む複数の中小プロジェクトを独自に遂行してきました。そういった同国におけるプロジェクト遂行の知見に加え、発電容量ベースで日本トップクラスのメガソーラー発電所建設を行った実績があること。そして、事業の経済性向上に寄与する様々な提案が総合的に評価され、本プロジェクトを受注。2018年12月に本プロジェクトを納期通り完工し、顧客による本発電所の商業運転が同月より開始されました。また、ベトナムタイニン省において、後続の太陽光発電所建設プロジェクト2案件を相次いで受注しており、両案件共に鋭意プロジェクト遂行中です。ベトナム政府は、2011年に第7次電力開発計画(PDP7)を策定し、国を挙げて再生可能エネルギーの利用拡大を推し進め、2030年までに太陽光発電の施設容量を12,000 MWに引き上げる計画を行っています。そんな中、このメガソーラー発電所から発電される電力の買い取りには、同国再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が適用される予定であり、本プロジェクトは、国策に深く関わる一例であるといえるでしょう。また、ベトナムだけでなく、特に東南アジア地域ではメガソーラー発電所建設計画が多く進行しています。当社ではそういった世界情勢に合わせ、2016年度からの5ヶ年を対象とする中期経営計画「Beyond the Horizon」において、発電を中心とするインフラ分野における事業拡大を基本方針の一つとして掲げています。今回の受注を足掛かりに、海外法人との連携のもと、今後もプロジェクトの受注に積極的に取り組み、再生可能エネルギーのさらなる普及に貢献していきたいと考えています。
日本原燃株式会社殿向け再処理事業所内(青森県上北郡六ヶ所村)に完工した、ガラス固化技術開発施設建設工事で、機電工事・付帯設備を担当しました。本施設は、貴重なウラン資源をより有効に利用するために、原子力発電所の使用済み燃料から再利用できるウランとプルトニウムを取り出すためのものです。これは「再処理」と呼ばれ、その過程でウラン、プルトニウムの他に、放射能レベルの高い廃液(高レベル放射性廃液)が発生します。「ガラス固化技術」は、この廃液をガラス溶融炉で溶かしたガラスと混ぜ合わせ、専用のステンレス製容器(キャニスター)に入れることで、ガラス固化体を製造する技術のこと。放射性物質を長期間にわたり、安定的な状態で閉じ込めておくことができます。ガラス固化溶融炉の模擬試験、遠隔保守・解体設備試験および運転訓練を行うことを目的とした本施設ですが、当社のガラス固化体の処分適合性などに関する基礎研究での貢献が高く評価され、受注に至りました。屋内凍結などの厳しい環境下だったことに加え、2011年3月に発生した東日本大震災による資機材不足に工期の延長も余儀なくされましたが、無事故で2013年10月に竣工。その後、本施設の円滑な運用は、再処理工場の安定運転に寄与しています。また、当社の提案による基準適用並びに検査内容の合理化により、総建設費の低減も実現しました。石油、天然ガス、石炭と並ぶ電力エネルギーとして、世界的に重要な役割を果たす原子力。当社は、これまでに国内外で、放射性廃棄物の処理・処分施設や使用済核燃料の再処理施設の設計・建設工事を数多く遂行してきました。その蓄積した原子力技術、プロジェクトマネジメント能力を生かし、海外の原子力発電所建設プロジェクトにも積極的に参加。その知見を生かし、福島第一原子力発電所の事故からの復興にも貢献しています。
高齢化社会の急速な進展、医療制度の改革などを背景に、将来を見据えた新たな施設づくりが求められる医療分野において、当社はこれまで全国各地で300件を超える病院・医療施設を手掛けてきました。東京都立松沢病院においては、国内のエンジニアリング会社ではじめてとなる、病院PFI(Private Finance Initiative)に取り組んでいます。PFIとは、公共事業や公共工事に民間の資金やノウハウを導入することで、国費の節減やよりよい公共サービスの提供を図る政策手法です。本プロジェクトでは、地域医療のニーズ調査、対外諸機関との調整といった施設のあり方を決定する「基本構想」、それを具象化する「基本計画」の立案フェーズおいて、当社ならではの視点による各種支援役務を提供。そして、EPCを中心として、医療分野で30年以上蓄積されたエンジニアリング手法を基にプロジェクトを遂行しました。建築・運営・情報を統合した建築設計だけでなく、病院の施設整備と維持管理、医事・物流・給食などの病院運営、医療機器・医療材料などの調達の各業務を統括するマネジメント業務も行い、「統合設計」を実施することで機能性の高い病院を実現しているのです。また、設計・工事においては、高い透明性、合理的な計画と発注システムによる建設コストの削減、質の向上を可能にするプロジェクトマネジメント(PM)、コンストラクションマネジメント(CM)役務サービスが、顧客から高い評価を得ています。国内初となるこの病院PFIを新たな知見とし、病院の経営パートナーとしてよりよい医療の提供に努め、海外への展開にも広げていきます。
本プロジェクトは低品位ニッケル鉱石を原料としたニッケルHPAL製錬プラントを、フィリピン・ミンダナオ島タガニート地区に建設するものです。本プラントは、低品位ニッケル鉱石からの製錬であるため、設備重量1基あたり、1,000トンの大型オートクレーブ(反応槽)を2基設置することで、その槽内での高温高圧のもと硫酸と反応させニッケル成分を浸出させるという技術が必要であり、非常に難易度が高いプロジェクトでした。しかしながら、石油精製、ガス・石油化学、医薬、原子力などの分野で長年培い蓄積された技術・建設ノウハウに加え、当社が保有する湿式製錬プロセスに関する高い技術力を発揮することで、完工に成功しました。遠隔地であったことに加え、建設地は雨季による降雨量が非常に多い土地でしたが、そういった悪条件を克服し、納期通りにプロジェクトを完遂させたことも、顧客からの高評価につながっています。当社は、この湿式製錬プロセスによるニッケル製錬プラントを、同顧客から2件受注し、いずれも成功に導きました。そういった実績があることから、この種のプラント建設では、同顧客はもちろんのこと、自他ともに世界のリーダーとして認められています。また、新興国を中心に今後ますます重要度を増す銅やニッケルといった非鉄金属製錬プラントの建設では、事業化調査から設計・建設・試運転まで一貫したサービスを提供することで、世界の非鉄金属供給拡大に貢献しています。
国際石油開発帝石株式会社(INPEX)が、日本企業としてはじめて大型LNGプロジェクトの事業主体(オペレーター)として開発作業を推進する本プロジェクト。当社は、リーダーとして、米国KBR社、千代田化工建設株式会社とジョイントベンチャーを組成し、年間890万トンの液化天然ガス(LNG)などを生産する、陸上ガス液化プラントにおけるEPCの役務を遂行しています。本プロジェクトでは、物価や人件費が高いオーストラリアでの工事量を削減するためプラントをいくつかの機能単位に分割して製作し、それを最終建設地で一つに組み上げるフルモジュールコンセプト工法を用いています。そのため、複数のモジュールヤードにおける建設マネジメントや、モジュール輸送船のロジスティクス最適化、プラント建設現場における工事監理など高度な対応が必要な上、メジャーLNGコントラクターである当社の手腕とリーダーシップが、強く求められました。さらに、このLNGプラントから生産されるLNGのおよそ7割が日本へと輸出されることから、今後の日本のエネルギーにおける安定供給を担う、重要なプロジェクトと位置づけられています。日豪両国の経済および社会の発展に寄与する本プロジェクトの実現ため、プラント建設現場での安全管理を徹底しながら、全力で取り組んでいます。
本プロジェクトは、当社初となる北米における超大型プロジェクトです。米国大手エンジニアリング会社のフルア社とジョイントベンチャーを形成し、EPC役務を遂行しました。当プラントでは、通常の油田・ガス田以外から生産される、非在来型天然ガスであるシェールガス由来のエタンを原料とし、年産150万トン、世界最大級のエチレン製造が行われています。本プロジェクトを受注した要因は、当社がエチレン製造プラントにおいて40プロジェクトを超える遂行実績を有していたことが一つ。そして、2004年、2007年にサウジアラビアにおいて同顧客が出資する合弁会社からエチレン製造プラントを受注しており、これらのプロジェクトを成功させた実績も受注につながる要因となりました。当社は、米国企業の存在感が強い市場の中、豊富な設計ノウハウ、世界中からの機材調達、5,000名近くの労働者の管理や建設計画をまとめ上げる高度なプロジェクトマネジメント力を発揮することで、本プロジェクトも完工に導いています。