社外取締役対談

当社の業績が2017年度に前期の最終損失から黒字転換を果たし、さらにプラントマーケットの回復の兆しが見えてきた中で、社外取締役遠藤茂、松島正之の両氏にこの1年間の当社の事業およびコーポレート・ガバナンスに対する評価、ならびに当社が今後持続的な成長を図っていくための課題について伺いました。

2017年6月に「EPC事業の立て直し」という大きな責務を負って石塚社長が就任し、様々な施策が取られてきました。ご評価やご意見をお聞かせ下さい。

石塚社長の就任1年目は順調な滑り出しと評価。箍が締まっていくことを期待。

遠藤
2016年度の最終損失を受けて就任された石塚社長は、この1年間この課題に対して具体的な施策を次々に打ち出し、着実に実行に移されてきたと評価しています。2017年度決算も黒字転換が図られました。
また、プラントマーケットの回復という環境変化の中で、2018年度に入りカナダの大型LNGプラントも受注しました。石塚社長のおっしゃっている「プロジェクトの箍(たが)を締める」は、現在の当社にとり極めて重要な挑戦です。その兆候は既に現れているようですが、今後とも、様々なプロジェクトの遂行過程や最終結果を通して確実に箍が締まっていく様子を見たいと思いますし、期待もしています。
松島

石塚社長就任1年目の評価としては、いろいろなご苦労もあったでしょうが、順調な滑り出しであったと思います。2017年度決算をはじめ成果が出始めていますので、これら施策を継続していけば、明るい未来が見えてくるのではないかと思います。
当社のコア事業であるEPCビジネスに会社のエネルギーを集中するという方針の中で、懸念になっていた事業投資の資産の整理にも取り組まれ、会社全体としてEPCオリエンテッドな組織とマインドに変わりつつあると感じています。引き続き経過を見ていく必要がありますが、1年目としては上々なスタートであったと感じています。

「プロジェクトの箍を締める」という施策の中で印象に残ったこと、また取締役会などで印象に残った石塚社長の発言がありましたらご披露下さい。

石塚社長は行動力の人。「稼ぐ力」「技術力」の再構築に注力。

遠藤

社内の意識改革という観点から、中堅・若手社員との懇談を実施したと聞いています。延べ人数約400名とFace to Faceで話し合う機会を持って、ご自身の方針や考えを直接伝えたということは非常に良かったと思いますし、石塚社長の人柄がよく出ていると印象深く受け止めています。
また、私がかねてから申し上げてきた「稼ぐ力」を高めるという点においても、石塚社長自らが顧客に対して当社の技術的な優位性を強くアピールされている点を高く評価しています。取締役会でプロジェクトの受注報告があった際、私から「どういった点が顧客から評価されたのですか?」とお尋ねしたところ、石塚社長は「当社の技術力と専門知識が決め手になりました」と力強くおっしゃいました。「稼ぐ力」を高めていくために技術競争力を重視している点が大変印象に残りました。

松島
取締役会における石塚社長の発言をお聞きし、総じて有言実行、行動力の人であると感じています。そうした強いリーダーシップが周囲にいる社員にも好影響を与えていると感じています。
石塚社長はプロジェクト関係者に対して、よく「リスクはどこにあるのか。そのリスクをどうマネジメントしていくのか」と投げかけています。先般受注したカナダの大型LNGプロジェクトに対しても、手綱を緩めることなく、どう成功裏に完成させていくのかということに大変腐心していることを、その言動から強く感じています。
石塚社長は、問題点を見抜く力に長けており、問題を解決に導くために適切なシーケンスやタイミングで施策を実行されていると感じています。昨年度はまず「稼ぐ力」の立て直しに注力しましたが、これを基盤に2年目、3年目は人財育成や技術力のさらなる強化など、中長期的な課題にも取り組んでいってもらいたいと思います。

当社は、この1年間も持続的な成長、発展のために必要となるコーポレート・ガバナンスの強化に着実に取り組んできました。その取り組みに対する評価と課題についてお聞かせ下さい。

地に足のついたコーポレート・ガバナンスへの取り組みを評価。

遠藤
当社のみならず、企業が持続的な成長や企業価値を向上させていくためにコーポレート・ガバナンスを充実させていくことは、当然のことであると考えています。当社においても取締役会の実効性を上げていくための様々な工夫や、コーポレート・ガバナンスの充実を図る仕組みづくりが継続的に進められており評価しています。
また、当社が真のグローバル企業として活躍し続けるためには、世界的な潮流であるESGやSDGsを念頭においた、例えば環境問題の改善や技術移転など、新興国のニーズを実現していくビジネスモデルの構築にも力を注ぐべきだと考えます。エンジニアリング会社としての強みが発揮できる分野であり、社会価値の提供という観点でも意義が大きいと思います。
松島
当社のコーポレート・ガバナンス強化については、2017年度も取締役会の報告事項の充実や、社外取締役、社外監査役を対象とした海外建設工事現場の視察を実施して頂くなど、評価しています。一方、社外取締役に求められている役割は、社外の視点から経営に対して監督や助言を行うことにあると認識しており、その視点は短期的な当面の経営課題だけでなく、企業価値の向上に資する中長期的な課題にも向けていかなければならないと考えています。従いまして、取締役会に上程される議案についても、当社の中長期的な方向性やビジョンに関するテーマを取り上げて頂き、社外取締役として是非その議論に入っていきたいと思っています。

2017年度に実施した豪・イクシスLNGプロジェクトの建設現場視察に関して、ご感想をお聞かせ下さい。

建設現場、プラントのスケールの大きさに圧倒。

遠藤
一言で言って、非常に元気づけられました。現場の社員の方々の士気は高く、若手社員が生き生きと多くの労働者が参加する朝礼を取り仕切っていたのが印象的でした。中国やタイなどのモジュールヤードにおいて、1ミリ単位で切り分けられたモジュールをダーウィンの建設現場で据え付け繋ぎ合わせる。実際に目の当たりにして、その緻密な作業と技術力の高さに大変驚かされました。
松島
建設現場、そしてプラントのスケールの大きさに圧倒されました。当社の現場プロジェクトチームの幹部は、粉骨砕身、多くのことに気を配りながら、プラント完成に向けて頑張っておられました。想定外の出来事に対応し、機器メーカーやサブコントラクターなど多くのリソースをマネージしながら利益を出す。現場でのご苦労を間近に感じて、EPCビジネスの難しさを改めて認識するとともに、社会的意義の高いビジネスであることを感じました。
現場事務所で駐在員からプロジェクトの概要の説明を受ける社外取締役・社外監査役の方々

国営石油会社やオイルメジャーの設備投資が復活し始め、プラントマーケットは拡大傾向に向かいつつあります。こうした環境変化を踏まえ、当社が中長期的に成長していくための課題とは何でしょうか?

長期的な成長にはレジリエンス力、インテリジェンス力が必要。

遠藤
不確実性が高い時代の中で、将来振り返ったときに2018年が業績回復への第一歩であったといえる年にしなければなりません。
現在のように先行きの不透明な国際社会を生き抜いていくためには、いかなる組織もレジリエンス(復元)力を高めていく必要があると思います。当社としても、プロジェクトマネジメント力、技術力、人財力など様々な観点から、たとえ失敗し、倒れたとしても、逆境を跳ね返し、復活していく力の向上を課題として意識し、養っておく必要があると思います。特に、当社の強みである人財力をさらに強化していくことが、レジリエンス力を高めていく上での大きな鍵になると考えます。
また、AIやIoTの進展は仕事のやり方を変えていくだけでなく、真のプロフェッショナルとは何かという議論にも及んでいくと思います。当社としても真剣に考えていくべき課題です。
松島
グローバルマーケットの視点で、大きく2つのことに注意を払っていく必要があると思います。1つはインテリジェンス力の問題です。国際社会の不確実性や流動性が高まっている中でプロジェクトを確実に遂行していくためには、単にリスクテイクを避けるというのではなく、カントリーリスクを含め様々なリスクに対するインテリジェンス力を高めて、どこにどのようなリスクがあるのかよく分析した上で、リスクマネジメントしていく必要があると思います。
2つめは、物事を複眼的に見るということです。例えば、現在16世紀に誕生したメルカトル図法による世界地図が一般的になっていますが、衛星など別な方法で地球を俯瞰してみると、約70パーセントが海洋で占められていることがわかります。実はそこに大きな市場としての可能性が潜んでいるのかもしれません。また、我々にとって一様だと考えがちな時間が国や地域によってその進み方が異なるように、プラントビジネスの世界においても、オイル&ガスの時代は終わったという見方がある一方、将来にわたって天然ガスの需要は伸長していくことが予測されており、オイル&ガスはまだまだ大きな可能性を秘めているかもしれません。私自身の反省も含めてですが、物事をもっと複眼的に捉えていく必要があると感じています。
遠藤
当社は、非常に優れた人財で成り立っている会社であり、人財こそ当社の最大のコアコンピタンスだと思います。プラントマーケットが改善の方向に向かっていこうとしていますが、マーケットの状況の如何に関わらず、人財育成を当社にとっての最重要課題と位置付けて取り組んでいくべきだと思います。社外取締役として、今後も社員の皆さんの意識や行動がさらに良い方向に向かっていくようにご意見を申し上げていきたいと考えています。
松島
社外取締役の役割とは、外部の視点から社内役員や社員の皆さんにとって、こういう見方もあるのかと新鮮な気持ちで受け止めて頂けるようなご意見を申し上げることではないか、と考えています。とりわけ、当社の持続的な成長に資する中長期的な観点の課題について、今後も取締役会などの場を通じて積極的に発言していきたいと考えています。