社外取締役メッセージ

「第3の変革」、実装を着実に 社外取締役 遠藤 茂

2020年度は、COVID-19の感染拡大が世界の社会、産業、生活のあらゆる面に甚大な影響を与えた1年でした。 2020年初め、まず気になったのは社員の状況、とりわけ海外駐在者等の状況でした。当社は早い段階から情報の収集に当たり必要な対策をとってきたと思います。

長期経営ビジョン「2040年ビジョン」ならびに、中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025」(BSP2025)の策定には積極的に参加し、当社グループの強み、テーマ、グローバル展開、SDGs、ESG等の視点から様々な議論をしました。グループ横断的に幅広い関与があり、全体の求心力維持・向上にも資することになったと思います。
「2040年ビジョン」ならびに「BSP2025」は、成長を強く意識したものになっており、戦略投資にも力を入れます。今後、この計画実施に全力を尽くしていただきたいと思います。

取締役会ではまた、IR/SR活動に関しても随時報告がなされてきているほか、指名・報酬委員会の取締役会への報告も充実しつつあります。また、障害者雇用を目的とした特例子会社設立も決議されました。

近年、石油メジャーに対する視線は厳しさを増しています。脱炭素に向け、具体的な取り組みを進めないこと自体が投資リスクと捉えられかねない状況が現出しています。 当社グループは、「Enhancing planetary health」をパーパス(存在意義)として掲げ、社会の課題解決に取り組み、そして2050年カーボンニュートラルを目指します。社会的価値を創造する中に、経済的価値を追求するという流れを社会が要求しています。当社グループにとって、ESG経営を進める中でいかに利益を出していくか、大きなチャレンジとなります。

当社グループは現在、持続可能な社会の実現に向けて「第3の変革」を進めています。私はこれを連続した変革と捉えています。持株会社の実装化への取り組みについて、グループ会社との関係も近くなってきたとの意見も聞かれるようになってきました。持株会社メンバーの意識変革も進んでおり、大所・高所の判断力に更に磨きをかけていただくことを期待します。これは基本的に、マネジメント・執行と監督との関係、持株会社とグループ会社との関係をどのように構築していくかというガバナンスの課題でもあります。

DXも日揮グローバルを中心に進められています。これも、生産性・効率性の向上を目的としつつも、併せて働き方、更に文化・倫理の問題等にも取り組むことが求められることになると思います。

社会における人財の流動化が進む中、当社においても人事制度改革について真剣な検討が進められています。プロフェッショナリズムを売りにしてきた当社グループですが、 DXの進展等、技術の高度化が進んでいく中で、人財のアウトソーシングやリスキリングへの取り組みも重要性が増していくでしょう。差異を受容し、多様性に満ちた人財群の輩出を期待しています。

今後10年間、国際社会における地政学上の力学は、これまでの10年とはかなり異なってくると思います。当社グループのビジネスもこれまで以上に影響を受ける可能性があります。常在戦場の覚悟が問われます。急激な変化に対処する能力、マーケット動向を読む力、リスクを察知する力等、レジリエンスを高める努力が、グループとしても個人としても、今ほど求められている時はないと思います。

「危機感」をバネに、改革を成し遂げる 社外取締役 松島 正之

2021年5月に発表されました、2021~2025年度を対象期間とした中期経営計画「BSP2025」は画期的なものです。

第一に、5年間を現時点からの投影という形で単純に取りまとめたものではなく、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」からバックキャストして策定され、その中の1stフェーズ「挑戦の5年間」と位置付けられており、未来につながるフォワード・ルッキングな計画です。

第二に、日揮グループのコア事業であるオイル&ガスのEPC事業についても、当面主軸ではありますが、2050年カーボンニュートラルの実現を宣言し、そのため「BSP2025」の期間では、エネルギートランジションに注力し、時を追ってオイル&ガスの「一本足打法」から離脱し、オイル&ガスの低・脱炭素化やクリーンエネルギーなど、多角的な切り口でのエネルギー事業に転換していくことを明確にしていることです。

第三に、日揮グループが持株会社体制に移行して最初の中期経営計画であることです。各事業部門の経営、特に成長戦略の迅速な判断を促進するという体制移行の狙いと人的・財務的資源配分の全体最適解およびグループ全体のガバナンスとの折合いという試行錯誤の場になりました。このため、「2040年ビジョン」を含めると、検討期間は1年を超える長期にわたり、また検討の密度も私にとって初めての刺激的な体験となりました。

「BSP2025」は策定されましたが、計画は実行に移されて初めて意味を成します。職場の一人ひとりが肚落ちするまで意見を交わし、その実現のために必要と思うことを日々実践していかなければ画餅に終わってしまいます。

ただ、一方で「BSP2025」は「不磨の大典」ではありません。

策定時に見落とした点がないとは言えませんし、また全力で取り組んでも計画と乖離が生じることも考えられます。更に想定しなかったような環境変化も否定できません。従って、職場の皆さんから、実践を通じて得た提案や意見が寄せられ、それを踏まえて計画がより実践的になり、内容がさらに充実することを期待しています。

「継続は力なり」は、真理です。しかし、5年、10年という時間軸でみるとどうでしょう。「旧来の陋習」に固執するという弊害にもなりかねません。特に、指数関数的に飛躍する技術革新を前提にすると、環境変化に即して絶えず自己変革を行っていくことが企業の生命線といっても過言ではありません。また、「危機感」は決して悲観主義者の産物ではありません。危機感をバネに改革を行っていくことは、将来を切り拓き、持続的成長を志向するという「自己肯定」の証にほかなりません。

日揮グループで働く人全員が、「危機感」をバネに企業改革に取り組み、揺るぎない企業価値を将来世代につなげるとともに、地球規模でのウェルビーイングに貢献することを誓い合いましょう。

新分野の拡大に向けて、人財を活用する 社外取締役 植田 和男

日揮グループは、1年以上にもわたる検討を経て2021年5月に長期経営ビジョン「2040年ビジョン」、および中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025」(BSP2025)を発表しました。しかし、翌日5月13日の株式市場の反応は芳しくなく、日揮ホールディングスの株価は前日比164円安の1,064円と10%を大幅に超える下落となりました。当日は日経平均も大きく下落したので、その影響ももちろんあったはずですが、5月中旬以降、2か月を経過した現時点でも、発表された計画をはっきりと再評価する動きは出ていません。

5月13日の株価反応の最大の要因は、2021年度収益予想が市場の期待を大幅に下回るものだった点だと思われます。株価は将来の業績に関する情報を織り込んで動くものですが、足元の2021年度の予想が大きな影響を及ぼしたということでしょう。

一方、「2040年ビジョン」、あるいは「BSP2025」について、様々な関係者の評価等を見ると、エネルギー分野では環境負荷を抑えつつ収益率の向上を、高機能材分野では育ちつつある芽を一段と育成、さらに新成長分野への意欲的取り組みといったわれわれのビジョンは理解されているように見えます。しかし、これらについて株式市場なりの視点からすると、現時点ではどのように将来の収益予想に織り込んで良いか分からないといったあたりが市場関係者の実感ではないでしょうか。われわれの計画を振り返ってみても、特に新規分野中心に、「実績づくり」、「新技術の獲得」、「M&A、パートナリング」といった表現が多く、収益向上へは時間を要しそうであることが否めません。

様々な新分野が期待通り立ち上がっていくためには何が必要でしょうか。月並みですが、私はヒトの問題が大きいと思います。外部の優れた多様な専門家を引っ張ってくるという意味ではなく、日揮グループの人財が適性に応じて、新分野に果敢に挑戦し、イノベーションにつながるような仕組みの必要性です。外部の専門家の招聘、あるいは企業ごと買収するというケースも増えていくでしょうが、この場合もその分野に応じた人財の評価、処遇が肝要になります。新人事制度はこうした点を視野に入れた動きですが、今後その運用段階で様々な調整が必要となるでしょう。私自身もこれらの点に注意しつつ、グループの新しい動きに参加していけたらと思っています。

市場の評価はまだまだこれからのことですが、全体像がある程度理解されていることから、少しでも個別の良い動きが出てくれば、思った以上の大きな評価につながる可能性があると期待しています。